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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

オススメ!映画 『ビューティフル』

 ミスアメリカの栄冠を勝ち取るサクセセストーリーか、はたまたミスコンの暴露物か? 実は、大人になりきれなかった女性が、人生で一番大切で"ビューティフル"なものに気付く物語だった。コメディタッチで見せながらも、親子間の繊細な問題やミスコンのあり方を さりげなく取り上げている。

 モナ(ミニー・ドライヴァー)は、小さい時からミスアメリカになる事しか頭になかった。8歳から自力で資金を稼ぎ、歯を矯正したりビューティスクールに通ったり 歌やダンスのレッスンに精を出しては、ミス○○と名のつくイベントに出場しまくる毎日である。 唯一の理解者であり親友のルビー(ジョーイ・ローレン・アダムス)に、 こっそり産んだ娘(子持ちはミスアメリカになれない)ヴァネッサ (ハリー・ケイト・アイゼンバーグ)を托して、とうとうミスイリノイにまでなれた。 後は全国大会で勝つだけ…とここまで書くと、 夢に向って努力するサクセスストーリーかと思うが、このモナは ライバルを蹴落とすのを何とも思っていないし、自分のイメージアップの為なら 病人でも何でも利用する、自己中心的性格の固まりのような女なのだった…。

 モナは幼いうちから親が自分に関心がないとわかっていた。それでやっきになって 自分で資金をため、ミスアメリカになる事だけを目標に生きてきた。 親が愛してくれなくても友達がいなくても、気持ちをいつも ミスアメリカになるという夢に向けていれば寂しくなんかない…。 そしてそのまま年齢だけ重ねているのだ。

 唯一の親友ルビーは、地味で控えめな優しい女性である。自分勝手なモナを母親のように温かく見守り、ヴァネッサも自分の子供として愛情をそそいで育てている。 無実の罪で刑務所に入れられるが、自分を信じて希望を失わない強い女性でもある。 人の気持ちを思いやれる、心の美しい人だ。 ルビーもモナがミスアメリカになるのを夢みている。 小さな町での生活で、気持ちが華やぐ夢がモナがミスアメリカになることなのだった。

 小さなしっかり者ヴァネッサは、ルビーママのもと、実の親モナよりずっと大人で 賢い女の子になった。騒動ばかり起こすモナおばさんが大嫌いだったが、 一緒にモナの実家に言った時に親からひどい事を言われているのを見てしまい、 モナをかばう。このシーンがとても泣けた。 全国大会に応援に来てくれるよう頼みにいくのだが、すげなく断られた上に、 審査員をたらしこんだんだろうと言う親に、 「全米で50人の中に選ばれたんだよ。なんで頑張れって言ってあげないの」 とヴァネッサが叫ぶのだ。 7歳の子供でもわかっていることが大の大人にわからず、モナをずっと傷つけてきたのだ。 親のささいな一言というのは、親だからこそグサリとくる事がある。 私もいつか子供を持ったときは、どんな事でもいいから子供を認めて、 不安を感じている時は抱きしめてあげられる母親になろうと思った。

 ラストがちょっとアメリカ的ハッピーエンドにバタバタとまとまりすぎかな…と思った。 個人的にはモナがヴァネッサを抱き上げて「ルビーに会いにいこう」と、 勇ましく去ってくれれば良かったと思う。

『ビューティフル』

監督:サリー・フィールド
出演:ミニ・ドライヴァー、ジョーイ・ローレン・アダムズ、ハリー・ケイト・イーゼンバーグ、キャスリーン・ターナー、レスリー・ステファンソン
2000年/アメリカ
配給 : キネティック

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(文:水間かおり)
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