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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
Sept. 11, 2001

「チャリティー映画祭」レポート

9/2 有楽町よみうりホールにて
作品紹介

2001年9月2日、今年の1月に起きたインドグジャラート州の大地震支援のため、インドセンター主催の「チャリティー映画祭」が催された。上映作品はゴーヴィンダー主演、本邦初公開の「婿殿」、アイシュワリヤー・ラーイ主演「ミモラ〜心のままに〜」、シャー・ルク・カーン主演「イエス ボス」の3本。3本観るのは正直つらい。2年前の東京ファンタスティック映画祭の悪夢が再び私を襲うが、「婿殿」だけ観て帰ることは出来ない理由が他にあった。なんとシャー・ルク・カーンとジュヒー・チャウラーが親善大使として舞台挨拶をする!! なんとしてでも当日まで体を鍛えて万全を期してお迎えせねば!と私の覚悟は決まり、当日9時半より私の長い長いインド映画ディーが始まったのである。


『婿殿』9:30am〜

さすがに朝の9時半から集まる物好きなインド映画ファンは少ないらしく、客の入りは3割強といったところ。スカスカの席に一抹の不安。まあいいや、次が勝負よ。と訳わからないことを考えているうちに映画が始まる。ストーリーは、ホテルのオーナーがホテル前に陣取っている食堂を何とか立ち退かせようとあの手この手を使っていやがらせをするがラストはやっぱり庶民パワーが勝つのだ! というやっぱりの話なのである。が、なぜこんな簡単なストーリーなのに3時間近くも必要なのだろうかと頭の中は?? で一杯になってしまった。ゴーヴィンダーのダンスは定評があるので期待していたのだが、ワンパターンのダンスで途中で辟易。演技、ダンスとも上手い人なのに演出がドタドタしていてもったいない気がした。しかし、なんだかんだ言っても寝る暇がなく結局全部観てしまった。


『ミモラ〜心のままに〜』12:50pm〜

さあ、いよいよシャー・ルク&ジュヒーがお出ましになるはずの時間になった。場内ほほぼ満席。その何割かがインド人が占めている。普通の映画祭とは違う熱気が会場を包み、子供の泣き声がどこからともなく聞こえてくる。やはりインド人はファミリーで映画を観に来るものなのね。と普段なら「子供を大人の映画に連れてくるんじゃないよ」と怒りに燃えるところだが、寛大な気持ちになってしまうのはなぜだろう。最初スクリーンにシャー・ルク・カーンの最新作「ASOKA」の予告編が流れる。壮大なドラマのようで予告編だけですっかり「ASOKA」ワールドに浸ってしまう。これは絶対に日本で公開してもらわねば。続いて司会の襟川クロさん、インドセンター代表の挨拶、そして民主党鳩山さんの挨拶があり、ようやくシャー・ルク&ジュヒーの御登場。ドタキャンしなかったのね。良かった、良かった。と、歓声とどよめきが場内をこだまし、1歩も2歩も遅れて熱気の渦に飲み込まれていく。シャー・ルクは濃紫のシャツに黒のパンツ。ハ〜ッ、やっぱりかっこいい。ジュヒーは白のパンジャビードレスを着て、清楚でキュート。映画で見るよりずっとずっと小柄で顔が小さい。お化粧も素顔と思ってしまうほど薄いが、美しい人は濃かろうが薄かろうが美しいのだ。さあ、それからがシャー・ルクの独壇場。司会者なんて必要なかったんじゃないの。と思うほど1人でしゃべり倒し、会場はシャー・ルクマジックに完全に支配される。日本で働いているインドの人は日本の素晴らしいところをインドに持ち帰ってほしい」「インド映画は黒澤監督の影響を受けている」等等、在日インド人に気を使い、日本人にも気を使い、通訳の女性を盛り上げ、前日飲んだらしい「酒」も誉め、とにかく飽きれるほどの話っぷり。頭の回転が速い人なのだろう。インド大地震の被害者を支援するためにこのような企画をした人達への感謝の言葉で締め括る。ジュヒーももちろんスピーチしたが、シャー・ルクに圧倒されてよく覚えてないのが残念。ただ最後に一言日本語で「お友達になりましょう」(すかさずシャー・ルクが英語に訳す)と言った様子がとてもかわいかった。ジュヒーは「ASOKA」のプロデュースもしているそうである。そして、シャー・ルクとジュヒーが二人並んで、舞台左手、中央、右手でそれぞれ挨拶するという、最後の最後までサービス精神旺盛さを見せつけて舞台を去って行った。

 ようやく「ミモラ〜心のままに〜」が上映される。来年一般公開が予定されている作品である。なぜ「ミモラ」なのかと疑問に思っていたのだが、それはダンスシーンで出てくる「ニブラ」(「レモンをちょうだい」の意味)のことらしい。しかし私の耳には「ニブラ」としか聞こえない単語がどうして「ミモラ」というハーブティーもどきになってしまったの? 「心のままに」だけではダメなのだろうか。まあ、それは置いておいて、ストーリーは昨年の東京ファンタスティック映画祭で公開されているので御存知の方も多いと思うが、インド人の結婚観、恋愛観がこの1本に凝縮されている。「DDLJ」もそうだが、未だに親の決めた相手と結婚することが良きこととされているインド人の結婚観を日本人は受け入れる事ができるだろうか。アイシュワリヤーが後半、夫の愛を受け入れるまでの心の軌跡を上手く演じ、素晴らしい映画だと思うが。友人などは「勝手な女」の一言で片付けていた。しかし、それとは別に音楽、映像とも最近のインド映画の中では群を抜いている作品。是非多くの方に観てもらいたいと思う。


『イエス ボス』5:20pm〜

「ミモラ〜」と同じく、「ASOKA」の予告編から始まる。シャー・ルクとジュヒーの挨拶も前回の時とほぼ同じ。ただ、違っていたのは、会場から「チャイヤチャイヤ」(「心から」で冒頭列車の上でのダンスシーン)の声援に応え、シャー・ルクがほんの一瞬踊ってくれたところ。まさか生ダンスを観ることができるとは思わなかったので、胸が一杯。この人は生まれついてのエンターティナーなんだなと再認識。さて、「イエス ボス」は一昨年の東京ファンタスティク映画祭で公開されているが、シャー・ルク&ジュヒーコンビのラブコメディー。場内は子供の泣き声が一層ひどくなり、ここは保育園、託児所? 状態だったが、なんだかインドの映画館にいるような(行ったことはないが)感じ。映画は皆が楽しめばいいのだ、皆で同じところで笑って、同じところで涙する。これはこれで良しとしようと、悟りの境地に達してしまった。映画自体は他愛無い話だが、2人の息の合った掛け合いやセリフの面白さは何度見ても飽きない。


インド映画を1日3本という私の冒険は体の変調も特になく、無事終った。しかし、やはり疲れた。翌日は仕事を休んで(夏休み)寝て寝て寝続けた。これは、映画というよりインドの熱さに当たったのかもしれない。

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(文:HIROKO YONEHARA)
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