女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
[シネマジャーナル]
22号 (1992.4)  pp. 2 -- 21
今年も集めました

1991年ベスト10

規定
  1. 1991年に劇場でご覧になった作品。(新旧は問いません)
  2. 洋画邦画とりまぜてベスト10を選出してください。
  3. 1〜10のランクづけは行いません。
  4. 各作品につき、50字程度のコメントをそえてください。
  5. できましたら、ワースト5も選出してください。 これも上の1〜4の規定に則ってください。
ご協力くださった皆さま本当にありがとうございました。 以下あいうえお順で列挙してあります。



I. (埼玉県・50代・男・自営業)
ここに泉あリ
すばらしい映画でした。これほどハラハラドキドキして観る映画があったでしょうか。 娯楽映画の最高作。楽しかった。音楽の使い方のうまさに涙が出ました。
16ミリ映画とはいえ、観られたのは幸せ。私のコレクションのスライドがあります。 このスライドと共に忘れられない一本です。
戦争と青春
このすばらしさで1時間56分。本当にあっという間に終ってしまうという感じ。 すばらしい映画でした。
☆今井監督が亡くなり、本当に映画を観たいと思わない。それほどがっかリした1年だった。 改めて今井監督のすごさを知った一年だった。


O. .(東京都・40代・女・主婦)
ふたリの女
女性であることの重さや、娘をもっている者にしか、 もしかしたら理解できない悲しみが胸にしみました。
真夏の夜の夢
リンゼイ・ケンプのバレエのすばらしさと音楽、色彩、すべてに酔わせてもらいました。
サンドイッチの年
人生の苦しさ、大人になっていくことの意味を地味ながら真面目にとリあげています。
黄金の馬車
アンナ・マニャー二の存在感に圧倒されたという感じです。
無防備都市
ひとつの時代を象徴する映画として、今でもインパクトがあリました。
シラノ・ド・ベルジュラック
ベルモンドのも大評判ですが、ドパルデューのシラノもすばらしい。 朗々たるせリふ、これこそ粋というものです。
ジャニー・オブ・ホープ
暗い暗い救いようのない映画だけれど、親子の情愛がひしひしと伝わってきて泣けました。
エンジェル・アット・マイ・テーブル
ヒロインの役作リにはちょっと感心しない所もあるが、 ひとリの女性の精神史を丁寧に描いていると思う。
愛に関する短いフィルム
今年観た最もすてきな愛の映画です。中年女性必見。
息子
三國連太郎・永瀬・和久井、その他の脇も皆良い。 夜中に父親が唄いだすところが一番良かった。



S. (東京都・30代・男・フリーライター)
無能の人
私は中学生の時からのつげ義春ファンでありますから、待ちに待った映画です。 反トレンデイの貧乏ポリシー拍手。
ワイルド・アット・ハート
マッチをするのもセクシーなD・リンチの真骨頂。 グロテスクで素敵な純愛メルヘン。N・ケイジの怪演が凄い。
土俗の乱声
あまリ注目されなかったが、これは素晴らしいドキュメンタリー。 伊福部昭の重厚なテーマ曲にもしびれる。
ナイト・オブ・リビング・デッド
スプラッター・ホラーとコケにするなかれ。 ロメロ&サヴィーニの込めたものはなかなか鋭く、かつ深い。
ミスティ
『人魚伝説』でまいりましたの池田敏春のハード・アクション。 つみきみほは『櫻の園』から一段とよくなった。
ダークマン
『T2』が陽ならこちらは陰。サム・ライミの映像センスに比べたら、 J・キャメロンなんてアマチュアである。
あの夏、いちばん静かな海。
賛否両論イロイロあったけど、さすがはたけし、 沈黙のコミュニケーションに撤したことで成功した。
テラコッタ・ウォリア
『満月』はこれを観て反省しなければいけません。 わが愛するコン・リーは3年連続の主演女優賞を捧げたい。
ワールド・アパートメント・ホラー
アジア人労働者の問題にエンターテイメントで斬リこんだ大友克洋の姿勢を買う。
テルマ&ルイーズ
リドリー・スコットが青空と大平原というのが意外で面白い。 ミーハーオバサンの自己変革はチャーミング。

〈ワースト〉
羊たちの沈黙
J・フォスターはインテリ的気負い、A・ホプキンスは新劇芝居。 D・ホッパーがやればよかったのに・・・・。
ターミネーター2
子供におもねって殺しをやめたターミネーターなんて…。 ラストのヒューマニズムも困るなあ。
イヤー・オブ・ザ・ガン
あのJ・フランケンハイマーともあろうものがなんたる俗物趣味。 登場人物の誰一人として共感がもてない。
ダンス・ウィズ・ウルブズ
インデイアンの描き方含めて決して悪くはなんだけど、 ケビン・コスナーのヒロイックな姿勢がどうも・・・。
八月の狂詩曲
子供たちのあの浮いた学芸会的会話はなんだ!  一体あの話のどこが映画として成り立つのかよくわからんよ。



S. (東京都・20代・男・学生)
素顔の貴婦人
暗い時代、物悲しく寒々とした北フランスの風景に漂う二人の淡い思いに心惹かれました。 サビーヌ・アゼマが美しい。 彼女の電話に嫉妬してしまうフイリップ・ノワレがかわいかった。
ローゼンクランツとギルテンスターンは死んだ
シニカルなユーモアに上映中ずっと笑いました。 運命に流されるしかなかった主人公を瓢々と演じたゲイリー・オールドマンとテイム・ロスが良かった。
ヌーベルヴァーグ
限リなく幸せにしてくれる映画。 A・ドロンとD・ジョルダーノの手が触れるシーンに心が揺れまくり、 美しい映像にすっかり魅了された。 60歳になっても常に新しい試みに挑戦し続けるゴダールの姿勢は、本当に凄いと思う。
彼女たちの舞台
ヌーベル・ヴァーグのシネアストであるジャック・リヴェットは、只者ではなかった。 2時間40分全く退屈しなかった。四人の女の子に付きまとう刑事の使い方がうまかった。
コントラクト・キラー
ジャン・ピエール・レオがとてもいい味を出していた。
メトロポリタン
『アメリカ帝国の減亡』ティーン・エイジャー版というべき作品。 有閑タキシード&イブニング・ドレス族の絶望がうまく描かれていた。 ラスト・シーンの爽快感が心地良かった。
いつか見た風景
不思議な満足感が残る作品。 冬の北イタリアの片田舎の風景が美しい。
女の復讐
凄い集中力の映画だ。
ドワイヨン監督への私の要望は、 めちゃくちゃコマーシャルなウレ線映画1本と自分の趣味性に突っ走ったアナーキックな映画を作ってほしいことだ。
広告業界で成功する方法
英映画のブラック・ユーモアにはいつも驚かされる。 本作品のブルース・ロビンソン監督に注目したいです。
デリカテッセン
ヴィジュアル、アイロニーたっぷりの脚本共にセンスが良かった。 :次点
愛を止めないで
『愛さずにはいられない』でもそうだったが、 エリック・ロンシャン監督は若者の焦燥感、孤独、やるせなさを描くのがうまい。 「自分は正しい」と弱々しく呟くことしかできない若者たちの映画をこれからも作ってほしい。

〈ワースト〉
タクシーブルース
凡庸で退屈な映画。女性の描き方も最悪。

☆エネルギーの感じられる映画が好きだ。技術的に多少まずくても、 勢いの感じられる作品に出会いたいです。


H. (東京都・30代・男・会社員)
ジェイコブス・ラダー
古い映画『ふくろうの河』を思い出したが、これはやはり今の映画で、 「現実」を掴めない焦燥感に共感する。
ロザリーとライオン
ライオンに魅かれる男と女が、とにかく瑞々しく、生きることは美しい事ではないかと思わせてくれる。
ドアーズ
なつかしい。あの頃の、あいつらは、今、どうしているか、 『舞踏会の手帳』ではないが、訪ねたくなった。
ニキータ
『グレートブルー』の男は海に潜り、この作品の女は街で人を殺す。 みんな、まともに、生きられない。
双旗鎮刀客
おどおどした少年。迫りくる極悪非道の群盗。血沸き、肉踊る。 映画の楽しさ、よろこび。何平はエラい。
インド夜想曲
ミステリアスな冒頭から、私はこの作品にのめリこんだ。 魂は船に乗っている。どこへ行くのか。
あの夏、いちばん静かな海。
この作品は映画ではない、邦画に対する「批判」だ。 今をもっと見ろ、とこの映画は言っている。
インデイアン・ランナー
日本が金をだし、純文学ならぬ純映画ができた。が、この映画、 純文学の処女性などクソ食らえの悪魔が棲む。
シェルタリング・スカイ
男と女、愛すれば愛するほど、孤独になる。もっと激しく一体になりたい。 セックスでもない、心でもない。
ハート・イン・ザ・ハンド
ピラミッドパワーを信じる男の荒廃が、身近なものに感じられる。 世界はどんどん狭くなっているようだ。



M. (東京都・30代・男・公務員)
四万十川
きちっと人間が描かれている。そんな日本映画が今年何本あっただろう。 古いと言われようがこれは秀逸な作品。 特に高橋かおり演じる朝子が旅立っていく時の顔(表情)は、 今までの苦労を彷佛させていて、回想シーンが浮かんだ。 親と子、子供同士の絆が光っている。
八月の狂詩曲
なんて心地好いラストシーンだろう。黒澤監督がいつも言っているように、 映画は素直に観たいものである。
おもひでぽろぽろ
アニメーションでの二人の力量は充分すぎる程わかリました。 次回作も楽しみですが、今度は『柳川掘割物語』とは違う劇映画を実写で撮ってほしい。
大誘拐
テンポの良さは見事。そして大好きな北林谷栄が出演しているのも嬉しい。 岡本喜八監督のようなベテランが、 何年も撮られない現状は有能なプロデューサーがいないということか。
アンボンで何が裁かれたか
戦争中の日本軍の非道をまたひとつ見せつけられた。 正直な日本兵に救われた感はあったが、敬慶なクリスチャンだから登場したという疑問は残る。 本当は日本人の手で作られるべきだったと思う。
息子
『家族』『故郷』ほど胸に込み上げるものがない。 それは征子が哲夫を好きになっていく過程が全く描かれていないため、 父親が「この子の嫁御になってくれますか?」とゆっくリ聞いたときに頷く征子。 そして喜ぶ父親のシーンが生きてこない。安心したことがどこか淋しそうな、 家路に着く父親の後ろ姿が好いだけに残念。
ふたり
NHKで放送した90分版につきる!
ターミネーター2
気分転換には、こういったアメリカ映画が最高。故にヨーロッパ、 アジア映画も観なければと思いつつも足が遠のいていくのである。
狭山事件石川一雄/獄中27年
冤罪だということが一目瞭然とわかる。免田、財田川、松山、 島田事件と無罪判決され、冤罪事件を生み出した捜査と裁判に重大な反省を促したと思っていたのに、 哀しみを通り越して怒りを感じる。
男はつらいよ 寅次郎の休日
寅がほのかな恋心を抱いて、さくらそしてまわりが気を揉む。 もはや老い始めている寅には、そういう筋書きは無理なのだろうか?  原点に帰ってほしい。

〈ワースト〉
陽炎
風、スローダウン
サイレントメビウス
12人の優しい日本人
夢二

☆『戦争と青春』の製作に関わって、 ひとつの山場である空襲シーンにも参加したことは忘れられない。 これから先、一本の映画にこんなにのめリ込むことはもうないだろう。


M. (高知県・30代・女・教員)
恋恋風塵
とにかく、どうしても劇場で観たくてたまらなかった映画。 早稲田の劇場もこの映画にぴったりのにおいで良かった。
バックドラフト
なんとなく入って、凄いと思うのは、とっても儲けた感じ。 炎が生き物のようで、迫力があった。
ターミネーター2
すごくヒットしていたので、偏見をもって観ようとしたが、おもしろかった。 どの場面も緊張感があってグッド。
あの夏、いちばん静かな海。
武さんのシャイでしかも若い美しさみたいなものが伝わって、素敵だった。 真木蔵人の海を見つめる姿が印象的。
シェルタリング・スカイ
官能的。すごく濃い映画。求める心というのは、果てしない欲望だけど、 地の果て迄行った時、偉大な感じさえした。
プロヴァンス物語・マルセルの夏
楽しかった。自分の子どもの頃と少し似ているようだが、 やっぱりそれ以上の憧れの少年期なのでしょう。
ブルーベルベット
歌が心に(耳に)残り、口ずさんでしまう。でも、彼は結局、どちらの女に魅かれたのか。 危険な女を選んでほしい。
おもひでぽろぽろ
リアルさに感心。
ワイルド・アット・ハート
気持ち悪かったけど、18歳くらいの女があそこまで色っぽいのには負けた。 私が男でもほっておかない。なんて。
息子
良かったけど、皆が善人で、貧しくて。このことだけで満足するのは嫌だ。 怒りだって大事だと思うけど…。



Y. (広島県・30代・女・会社員)
シエルタリング・スカイ
愛する人の心臓を飲み込んだらこんなだろうか。 カラカラと乾いた心を身体で彷徨う女の行き着く先・・先はない。
ミラーズ・クロッシング
男の美学をいうにはあまりにもストイックで、しかも激しい。 女はやっぱリ脇役ね。入り込めない絶対に。
ワイルド・アット・ハート
リンチが突き抜けた! まるでゲロを吐いた後に澄んだ泉の水を飲むような。 清濁併せ呑むっていうのは正にこの事。
あの夏、いちばん静かな海。
たけしがこの映画で言葉を省いたのと同じ理由で私もこの映画をこうこうこうでと言葉にはすまいと思う。
マッチエ場の少女
これ観てクラくなったらオマエほんとにクライぞと自分に言聞かせながらニヤニヤ笑って元気になる不思議。
ケーブルホーグのバラード
大好きなペキンパーが珍しくやさしさ込めて描いた女像だと思うから、 ステラ・スティーヴンスが私は好き。
今すぐ抱きしめたい
真っすぐであるが故に揺らぐ、混沌の中だからこそ純な男と女の思いが切ない程に胸をつく。 香港青春しみじみ。
ミーティングヴィーナス
見栄えのするオペラ的大人の映画なのに地味。男が女を追うのもハナにつかない。 名人の痩身術。
人間は鳥ではない
タイトルがまず好きなのだ。くたびれたおじさんも、 カラーよりずっと官能的な女のキレイさも。監督素敵ね。
恋する人魚たち
ウィノナ・ライダーって本物だわ。とこれを観て遅ればせながら思った。 クセ者といえばクセ者だらけの魅力。

〈ワースト〉
推定無罪
こういう否定の仕方は良くないが、なんといっても原作が面白すぎた。 読んでから観た私の罪とも言えるだろう。



Y. (埼玉県・30代・男・公務員)
日本映画
ふたリ
相変わらず少女に固執している大林監督だが、作品にちょっと格調が漂ってきたのが凄い。
あの夏、いちばん静かな海。
何も説明しないドラマの味わい深さ。
息子
恋した少女が聾唖者だとわかるまでの二人のやリとリが素晴らしい。
大誘拐
小気味良いカッティングの心地良さ。
おもひでぽろぽろ
昔の思い出たちが、現在の自分を励ましてくれるラストシーンに感動した。
八月の狂詩曲
リバイバルされた『七人の侍』に及ぶべくもないが、黒沢の小品も好きなので、 ここのところ小品を連打しているのがうれしい。
ラストのおぱあちゃんを追う孫たちの走りをひとりひとり短くつなげた演出が、 『七人の侍』の有名な侍たちの走りと同じで、それだけで感動。
無能の人
十二人の優しい日本人
あさってDANCE
男はつらいよ 寅次郎の告白
『満男の恋』三部作の完結編で、出来としては前作の『寅次郎の休日』に劣るが、 満男を通してシリーズの総括をしているようであり、感慨深い。

外国映画
髪結いの亭主
羊たちの沈黙
双旗鎮刀客
マッチエ場の少女
コントラクト・キラー
愛と哀しみの旅路
エンジェル・アット・マイ・テーブル
インド夜想曲
ニキータ
ターミネーター2
洋画が毎年のように未知の監督の才能と出会えるのがうれしい。 『髪結いの亭主』は、トリュフォーを思わせるほろ苦く、やさしく、暖かい映画。 そして、そっけなさそうで、人なつこい感じがするアキ・カウリスマキ監督の奇妙な魅力。

〈ワースト〉
ワイルド・アット・ハート
アクが強すぎて、ついていけない。
ゴッドファーザー PART III
PART II の偉大さがよくわかる。 娘役が初めのウィノナ・ライダーでロバート・デュバルがちゃんと出演していたら、 まだ救われたと思う。
幕末純情伝
面白くなリそうな話なのに、あまりにもひどすぎる。
シラノ・ド・ベルジュラック
ドパルデューのシラノがあまリに自信満々で哀しみがない。 『愛しのロクサーヌ』のスティーブ・マーチンのシラノの方が、 コンプレックスを持つ者の哀しみが良く出ていたと思う。
グリフターズ
『スティング』みたいな面白を期待していたら、あまりに殺伐としていて後味が悪い。





そしてスタッフから…




I. S. (神奈川県・20代・女・会社員)
七人の侍
初めて劇場で観ました。凄い。やっぱリ凄かったです。 役者もセットも音楽も一級。黒沢監督は偉大です。
椿三十郎
ラストの決闘シーン、見事でした。感激しました。モノクロなのに、 椿や血が鮮やかでリアルなんですよね。
テルマ&ルイーズ
スーザン・サランドンが良かった。ラストシーンでなぜか涙がこぼれて困ってしまった。
ターミネーター2
エンターテイメントの極み。これでもかこれでもかというCGには圧倒されてしまった。
ロシアハウス
内容はともかく、ショーン・コネリーとミシェル・ファイファー、音楽がよかった。 個人的な思い入れで観た。
おもひでぽろぽろ
タエ子のしわが気になるとかいい始めたらきリがないけれど、 私はただ懐かしい想いで純粋に涙しました。
ミュージックボックス
ジェシカ・ラングの弁護士役とせつない音楽に魅かれました。
天井桟敷の人々
セットの素晴らしさ、豪華さ。女優さんがきれいであること。 映画の原点をみたような気がしました。
天国の半分
主人公の女性にひどく魅かれました。おとぎ話的なストーリーもさわやかな感動。
大誘拐
岡本喜八さんの作品は昔の方が面白いけれど、やっぱリ岡本監督、ここにあリ、 ということで入れました。

〈ワースト〉
推定無罪
ストーリー展開がかったるかった。ハリソン・フォードの味も活きていなかった。
少年時代
出てくる少年達が現代っ子ぽくてイマイチでした。
満月
原田知世と時任三郎がさっぱリ。
虚栄のかがリ火
デ・パルマということで期待していたのですが、イマイチ。



I. E. (東京都・40代・女・自由業)
エンジェル・アット・マイ・テーブル
映像、人物のとらえ方、主人公の容姿…どれをとってもこれまでの男たちの感覚にない 自然体の女性の感性が感じられる。こういう映画が観たかった。
ターミネーター2
とにかく好き。音楽と映像と時代と全てがマッチした今の映画。 スッゴク疲れていたけど全然眠くならなかった。
シザーハンズ
娘と二人で観て泣いた。あんな可愛い男の子が降らしてくれる雪だと思うと、 つい白い雪を氷イチゴにして食べちゃいたい。画面の色もカラフルで楽しい。
ふたり
去年の夏、子供達と尾道に旅行。大林監督の一連の作品の画面を思い出しながら、 急な坂道をハアハア登ったリ、下ったリ。何度観てもあの世界は病的で私を惹きつける。
羊たちの沈黙
ジョディ・フォスターが最高に素敵。それに精神異常の囚人も妙にセクシー。 ジョデイと上司の関係もあったかい。吉永小百合さんが、 次回作でジョデイなみの検事に扮するとか…観たいような、やめた方がと忠告したいような…。

〈ワースト〉
推定無罪
犯人がみえみえ…。
ネズミ小僧
チュー公物語のつくりかた世紀末版
映画としての楽しさが何ひとつない。
新・同棲時代
テレビとどこが違うの。なんでこれを映画にするの。
私がウォシャウスキー
宣伝広告と内容が少し違うんじゃないの。



I. M. (沖縄県・30代・女・主婦)
あいつ
の水の誘惑。岡本健一の、キャラクターが物語に現実味を与える。 今の若い映画監督に欠けているのは、女の子を描く技だ。
アタランタ号
これこそ映画の水の誘惑。この誘惑からは誰も逃れられない。 皆でアタランタ号に乗り込み、川の流れに身をまかせよう。
彼女たちの舞台
電車の車窓を流れる風景。 隔離されたような郊外の彼女たちの住まいや舞台の空間は何が起こっても壊されることのない聖域である。
神の道化師・フランチェスコ
聖域といえば、この映画の中では野も山もすべてが聖域である。
スキンレスナイト
何気ないエピソードをユーモアを交えてさらりと描くその語リロのうまさは観る者を飽きさせない。 真面目な、そして最近には珍しい大人の映画だ。
時が吹乱く
家の周囲をグルグルとカメラが回り続けるうちに季節が次々と移り変わる、その美しさ!
ヌーヴェルヴァーグ
誰も水の誘惑から逃れられない!
マッチエ場の少女
ヒロインの働くマッチエ場は、すっかりオートメーション化されていて『モダンタイムス』のようだ。
夢二
豪華で美しくて夢のようだけれど『ツィゴイネルワイゼン』の時から比べると、 やっぱりテンションが落ちているようで物足リない。

☆去年は三ヵ月ほど映画を全く観られない、状況があったため、 ベスト9しか選べませんでした。



おまけのベスト20



宮崎 暁美
ミュージックボックス (コスタ・ガブラス/89)
桜の園 (中原俊/90)
愛と哀しみの旅路 (アラン・パーカー/90)
いつの日かこの愛を (林嶺東/89)
その年の冬は暖かかった (〓昶浩/84)
ウーマンストーリー (彭小連/87)
誰がビンセントチンを殺したか (クリスティン・チョイ/88)
アンボンで何が裁かれたか (スティープン・ウォーレス/90)
女性外交官 (S・ガナーソン/91)
ダンス・ウィズ・ウルブズ (ケビン・コスナー/90)
シスター・ステラ・L (マイク・デ・レオン/84)
グレート・ウォール (ピーター・ワン/86)
エンジェル・アット・マイ・テーブル (ジェーン・カンピオン/90)
ミシシッピー・マサラ (ミーラー・ナーイル/91)
ファイブ・ガールズ・エンド・ア・ロープ (葉鴻偉/91)
ハーレム135丁目 (カーレン・トーセン/89)
戦争と青春 (今井正/91)
ハート・ブルー (キャスリン・ビグロー/91)
客途秋恨 (アンホイ/90)
テルマ&ルイーズ (リドリー・スコット/91)

一九九一年一月から見た順。一九九一年に見た映画本数一〇三本。 内、劇場で見た映画七二本。公民館、パルコパートIIIなどのスペースで見た映画二八本。 試写三本。

一九九一年は渋谷によく通った。 もちろんそれは私が見たいと思う作品を渋谷でたくさんやっていたということだろうけど、 その前の年は池袋が多かったのに大きな変化だ。 私が見たいと思う作品が池袋から渋谷に移って来たのかな?  あるいは私の好みが変わったのか?  今までは池袋文芸坐でやっている作品に見たいと思うものが多くて、よく通っていたのに 去年はほとんど行っていない。見たいと思う作品のプログラムが少なかった。 池袋にあまり行かなかったのはスタジオ二○○がなくなったことも影響している。

シードホール、パルコパートIII、ル・シネマ、シネタワーなど、 渋谷の映画館事情やラインナップが充実してきたことも、渋谷が好きでない、 私みたいな映画ファンの足を向けさせたのかな。 アセアン文化センターでフィリピン映画祭というのもあった。

そして何といっても去年はル・シネマにずいぶん通った。 カナダ映画祭、東京国際映画祭アジア映画週間、国際学生映画祭、 レニ・リーフェンシュタールの作品、そして文芸坐で何年もやっていた中国映画祭までも ル・シネマでやったのだもの、ほんとに盛り沢山の企画があった!  できたばかりの頃も『カミーユ・クローデル』『フリー・ダカーロ』 など見たい作品が目白押しだった。しかし、何回通ってもル・シネマが好きになれない。 狭いし、入れ替え制だし、(続けて同じ作品を見たいと思う時だって結構あるでしょう)、 見るのに早めに行って整理券をもらわないと見れなかったりと、しちめんどくさいし、 とても管理的な気がする。小綺麗だけど、私にはどうもとっつきにくい。 私はやっぱり文芸坐や三鷹オスカーみたいな映画館が好き。 たとえ上映中にネズミが横切ろうと、床が時にはベトベトしていようと、 酔っ払いがいびきをかいて寝ていようと。

とはいえ、見たい映画を見るためには嫌いな映画館でも行かねばなるまい、 という具合でル・シネマに通った。

カナダ映画祭の『女性外交官』は中米に赴任した女性外交官の、命をかけた友情の物語。 他は『ぺーパー・ウェディング』が良かった。 『グリーンカード』のように永住権を得るために紙の上での結婚をするという物語。 『グリーンカード』と同じようなストーリー展開だったけど、こちらのほうがよりリアルで、 ハラハラした。

東京国際映画祭では『ビレッジ・ボーイ』『おはよう北京』 (シネマジャーナル二一号記載) をここで見たし、東京国際学生映画祭では、 今話題の監督たちの学生時代の作品を見ることができた。 といっても私は田壯壯監督、張芸謀撮影の『小院』が見たかったのだけど。 これは王好為監督の『夕照街』に似た作品で、北京の下町を舞台にした、 日本でいえぱ長屋物風の物語。まだ若かった彼らが結婚した女性の、 夫との葛藤を描いていてびっくりした。謝晋風の作品でもあった。 後の田壯壯監督『鼓書芸人』につながる作品だと思う。 中国映画祭については別のぺージに記した。

そして、レニ・リーフェンシュタールの作品。 十年くらい前に彼女の「ヌパ」という写真展を見て、彼女の作った映画を見たいと思っていた。 それがやっと実現した。まだ、一本しか見ていないのでいつか他の作品も見てみたい。 登山が趣味の私としては彼女が作った山岳映画『青の光』 や彼女が出演した山岳映画を見たいと思う。 いつか、文芸坐あたりで彼女の特集をやってくれないかな。

アセアン文化センターで聞催された、初めてのフィリピン映画祭では 『シスター・ステラ・L』が印象に残った。 未婚の母たちの施設で働く修道女が社会や政治の腐敗、矛盾に目覚め、 社会変革の闘いに参加していくまでを描いたものだったが、 フィリピンでは反マルコス感情がピークの頃上映され、大変話題になったそうだ。

その他去年は、公開された時には見たかったけど見れなかった作品や、 公開時には知らなかった作品などを公民館などで見ることができた。 『その年の冬は暖かかった』 『サラーム・ボンベイ』 『インディアキャバレー』などだ。

そして去年はずいぶんミーハーしちゃった。 私、いつも堅い事ばかり書いているけど、ほんとはミーハーなんだ。 でもミーハー精神と好奇心はやる気のもとだから大切なものだと思う。 この間なんか周潤發スペシャルのチケット三枚とも買ったって言ったら、 やっぱりミーハー精神旺盛の勝間さんにあきれられてしまった。

マイプライペート・アイダホ』を見て、勝間さんじゃないけど、 すっかり、キアヌ・リーブスのファンになってしまった私は 『ハート・ブルー』を見にいって、ますます入れこんで 『ラジオタウンで恋をして』も公開されたらすぐに見にいっちゃった。 『ハート・ブルー』では、あの波に圧倒された。

そして、一九九一年一番の出来事は姜文(『芙蓉鎮』『紅いコーリャン』の主演男優)と話したこと。 彼はとてもユーモアのセンスや茶目っ気のある人だった。 彼がきっかけで中国語圏の映画にのめり込んでいったし、中国語を始めたようなものだから、 ほんの一言二言だけど、私の中国語が通じてすごく嬉しかった。 写真写りの悪い彼だけど、私の「笑一下」(ちょっと笑って) という注文に応えて写真に収まってくれた。握手もしちゃった! 大感激!!  (彼のことについては別の頁に詳しく書いた。)

それから、もうひとつ大きな出来事はシネマジャーナルのスタッフの手伝いで 『女の視点で見れば映画は二倍面白くなる』を作るのに参加したこと。 佐藤さんの家に何回も泊まりがけで行って、大変だったけど、とても良い経験になった。 そして、自分の思っていることを、文章にするって大変だけど面白い! ということを知った。 映画の見方も変わった。挙句の果てに年末にはワープロを買ってしまった。 私にとって充実した盛りだくさんの一九九一年だった。




勝間 由美子
ニキータ (L・ベッソン/仏・90)
櫻の園 (中原俊/日・90)
大誘拐 (岡本喜八/日・91)
あんなに愛しあったのに (E・スコラ/伊・74)
いつの日かこの愛を (リンゴ・ラム/香港・89)
アンボンで何が裁かれたか (S・ウォーレス/豪・90)
賭聖 (コーリー・ユン&ジェフ・ラウ/香港・90)
ダンス・ウィズ・ウルブズ (K・コスナー/米・90)
ワイルド・ブリット (ジョン・ウー/香港・90)
羊たちの沈黙 (J・デミ/米・91)
ロビン・フッド (K・レイノルズ/米・91)
エンジェル・アット・マイ・テーブル  (J・カンピオン/ニュージーランド・90)
おもひでぽろぽろ (高畑勲/日・91)
ターミネーター2 (J・キャメロン/米・91)
デイズ・オブ・ビーイング・ワイルド《阿飛正傳》  (ウォン・カーウァイ/香港・90)
客途秋恨 (アン・ホイ/香港&台湾・90)
グリフターズ 詐欺師たち (S・フリアーズ/米・90)
テルマ&ルイーズ (R・スコット/米・91)
ニュー・シネマパラダイス 完全オリジナル版  (J・トルナトーレ/伊&仏・89)
七人の侍 (黒澤明/日・54)

ドキュメンタリー部門
誰がビンセント・チンを殺したか (C・チョイ/米・88)
らせんの素描 (小島康史/日・91)

ワースト
・プリティ・ウーマン (G・マーシャル/米・89)
[この程度の出来でちやほやするなよな]
・ハバナ (S・ポラック/米・90)
[サンダンスの主催者がなぜこんな映画にでるの?]
・過ぎゆく時の中で (ジョニー・トゥ/香港・89)
[10年古い。襲仔の駄作は腹が立つ]
・悲しみよさようなら (J・エイブラハム/米・90)
[ウィノナの駄作も許せない]
・夢二 (鈴木清順/日・91)
[私のバイオリズムに合わず、頭痛がした。それにあの料金であの椅子はひどい。 おしりも痛かった]

女優
中島ひろ子/「櫻の園」
ジョディ・フォスター/「羊たちの沈黙」
リンダ・ハミルトン/「ターミネーター2」
カリーナ・ラウ/「阿飛正傳」
アネット・ベニング/「グリフターズ 詐欺師たち」
ジーナ・デイビス/「テルマ&ルイーズ」

男優
ジョン・ポルソン/「アンボンで何が裁かれたか」
[日本軍に兄を処刑された兵士を演じた人です]
グラハム・グリーン/「ダンス・ウィズ・ウルブズ」
チャン・イーモウ/「テラコッタ・ウォリア」
[この人は《天下を取る顔》をしている]
ジャッキー・チュン/「ワイルド・ブリット」
アンソニー・ホプキンス/「羊たちの沈黙」

以上劇場で見た50本より、日付順

映画館で、もしくは映画祭の会場で50本も見たというのは新記録。 91年は意地になって毎週のように週末映画館通いをしていた。 家のビデオデッキの調子が悪く、買い替えることができたのがやっと年末になってから、 というのも映画館通いの一因。ビデオデッキが新しくなったら早速レンタル屋通いを再開して、 91年の年末はいまひとつ見たいロードショーがなかったため、全く映画館へ行かなかった。 このため過去に見逃して悔しい思いをしていた「危険な関係」と「バグダッド・カフェ」 をビデオで見て、これらは上記のリストには載せられないけど忘れられない91年の出会いの作品になった。

ただ91年悔やまれるのは、ロードショーと映画祭(香港電影博と東京国際映画祭)には通ったけれど、 名画座に1度も行かなかったことだ。 文芸坐のしねぶていっくには何回か行ったのに、肝心の映画館には入らなかったり…。

逆に一度見たのにもういちどお金を払って見てしまう映画が二本あった。 一本は「羊たちの沈黙」。この映画を完全理解したいため二度見るわ、 ぺ一パーバックと新潮文庫両方買うわ、同じ原作者の「レッド・ドラゴン」と 「ブラック・サンデー」を捜し回るわ、一時は取りつかれてしまった。 ホラー嫌いの私が数々の死体にもめげることなくこんなに夢中になったのだからスゴイ映画だ。

そしてもう一本が「デイズ・オブ・ビーイング・ワイルド」(原題「阿飛正傳」)。 これは正確に言うとまだ1回しか見ていないのだが、 3月下旬から「欲望の翼」という邦題でロードショー公開されるのでもう一度見に行くつもり。 この二本に「グリフターズ 詐欺師たち」がベスト3です。

ミーハー〈雀〉としては相変わらず周潤發に狂い、 クリスチャン・スレーターの来日を見に行ったりしていたが、 91年に狂い始めた俳優はケヴィン・コスナーとキアヌ・リーブスである。 ケヴィンは今まで何本も見ていて、しかも中でも「フィールド・オプ・ドリームス」 は大大大好きな作品だけれど、ケヴィン自体がどうのこうのというより、 あの作品の優しさばかりに感動していた。 それが去年のアカデミー賞の受賞式で好感をもち、「ダンス・ウィズ・ウルブズ」 で夢を実現させた力量を知り、さらには「ロビン・フッド」でかっこ良さに酔わされてしまった。 ロビンと一緒に縄につかまってくるくる降りてくるマリアン姫がうらやましかった。 ああ、「JFK」混みそうでいやだなあ。一方のキアヌの美貌には涙が出そうなくらい感動した。 こんな美しい人がいるなんて!  私は「ラジオタウンで恋をして」 の上映館シネマ・ミラノに開場前から並んでキアヌのブロマイドもらっちゃったもんね。 (そういえば有楽シネマでも發仔の「狼たちの絆」のテレカをもらった)

女優はジョディとリンダに惚れました。 新人では「今夜はトーク・ハード」 でC・スレーターの相手役をやったサマンサ・マティスがキュートで印象に残っている。

最後に、迂闊にも見逃してしまった作品ベスト10を後悔の念をこめて挙げます。 「いますぐ抱きしめたい」 「あの夏、いちばん静かな海。」 「マイ・プライベート・アイダホ」 「シラノ・ド・ベルジュラック」 「バック・ドラフト」 「スウィーティー」 「ワイルド・アット・ハート」 「モ’ベター・ブルース」 「ふたり」 「金日成のパレード」です。 番外としてWOWOWの「ツイン・ピークス」も。 衛星放送もなく、品揃えの良いビデオ店も近くになく、ブームに乗り遅れている我が身が悲しい。




1991年も忙しいといいつつふりかえると結構たくさんの映画を観たような気がする

大牟礼 亮子

1月 は台北にいて、巷では『霊幻家族』(御存じキョンシーもの) だの『ゴースト』だのしたりして、電影資料館(フィルムライブラリー) ではルノワールにオフュルスにファスビンダーまでするという幅広い映画生活を送る。

2月 もホンコン+ハリウッドかライブラリー通いで、中間はないが幅は広いという映画生活。 途中、一時帰国したとき日比谷でシャンテして観た 『モー・ベター・ブルース』が新鮮だったりするのである。

3月、 呉念真・脚本の『情定威[女尼]斯』 (ベニスの想い出??)なる珍品を観る。海外ロケのある2時間ドラマみたい。 『冬冬の夏休み』で妊娠しちゃう、 はすっぱな女の子が高校生役でアイドルしている。 金持ちのぼんぼんが旅先・ベニスで出会った美少女に一目惚れ。 思わずナンパして「君、日本人だろ」のセリフには苦笑い。

帰国すると、ブニュエルのメキシコ時代・第2弾のブンカムラとロッセリーニの三百人劇場通いで、 おお忙しの3月・4月。 それにしてもブンカムラに気取ってやって来たアベック、 『グラン・カジノ』なんか見せられて文句も言えずムズムズ出てくるの図、 なんての喜々として観察している私はなんてイジワル。

三隅研次で雷蔵する5月

6月 のとある休日『8月の狂詩曲—ラプソディー—』 せねばと思いつつ、 『ニュー・ジャック・シティー』に寝返る。 でも『羊たちの沈黙』の後ならこのセレクションしかないよ…。

7月、 『パイナップル・ツアーズ』=映画製作の方がボチボチ本格化して忙しくなり、 めっきり映画の量が減る。 『ローゼンクランツとギルテンスターは死んだ』 G・オールドマンとT・ロス、ともに良いけれど、もっとバカバカしく、 とことん下品に『クライ・ベイビー』したいワタシである。

マイ・プライベイト・アイダホ』とフィリピン映画祭 『マニラ・バイ・ナイト』、ゲイとオカマってこんな具合に違うのね。

8月 ごろから本格的に『ツイン・ピークス』し始める。

8月のラプソディー』からは足が遠のきっぱなしのまま『七人の侍』である。

おもひでぽろぽろ』を慌てて観て始まる 9月。 アニメはやはり苦手なのである。良い人しか出てこないのである。 等身大の若いフツーの女性像というのは確かに新鮮かもしれない。

ところで、達磨が東へ行ったとかいう映画にはまいった。 もともと馴染めない岩波ホールなうえ、 まったく映画に入れないというのに心地好く眠ることもできない。相性が悪かったということか。

10月、 いきなり『新・同棲時代』、『満月』、 『息子』を一日ではしご。 ピンからキリまでといっても、キリの方のレベルの問題だと思う。

テルマ&ルイーズ』も『ハートブルー』 もそのときは結構エキサイトして観たという記憶があることはある。 でも『グリフターズ』のように体に染み込む余韻はない。

11月。 という訳で(どんな訳だ??)『インディアン・ランナー』 の余韻もしっかり染み込んでいる。 名画座で観た『インド夜想曲』ではすばらしい眠りに誘われた。 最近観た『髪結いの亭主』といい勝負。 そう、「いやー、よくねたなあ」という悲しい満足感しか残らない映画というものが確かに存在する。

ところで知り合いの男性ら、こぞって『無能の人』 に憧れにも似た想いを抱くよう。 (具体的には「無能の人のすすめ」とかいう本を買ってしまうとか…) なるほど、あれが男のロマンなのか。う〜ん、女と男の見解の違いであろうか。

暮れもおしつまった 12月 も更におしつまり田荘荘特集。 『狩り場の掟』のあまりの厳しさ無情さに 「じゃ一体あの『ダンス・ウイズ・ウルブズ』 とかいう映画の?本映画では動物は一切傷つけていない? とかいうラストのクレジットは何だったの」 って感じで。 そりゃ、作った人間は満足だろうけどね・・・

狼やインディアンと心が通い合うといった幻想でとりあえず自分の立場を正当化できるような世界観は、 微塵も持ち合わせない田荘荘は兎や鹿が撃たれ血を流し死んで行くさまや、 羊が生き埋めにされていく様子を血も涙もないままえんえんと観せるのであった。


■相性のよかった映画
『彼女たちの舞台』 ('88/フランス/ジャック・リベット)
『マッチエ場の女』 ('90/フィンランド/アキ・カウリスマキ)
『コントラクト・キラー』 ('90/フィンランド+スエーデン/アキ・カウリスマキ)
『シェルタリング・スカイ』 ('90/イギリス/ベルナルド・ベルトリッチ)
『ケーブルホーグのバラード』 ('70/アメリカ/サム・ペキンパー)
『神の道化師、フランチェスコ』 ('50/イタリア/ロベルト・ロッセリーニ)
『ドイツ零年』 ('48/イタリア/ロベルト・ロッセリーニ)
『ナサリン』 ('58/メキシコ/ルイス・ブニュエル)
『ハートに火をつけて』 ('89/アメリカ/アラン・スミシー)
『ホット・スポット』 ('90/アメリカ/デニス・ホッパー)  (びでおデシカミテイナイケレド、 ろーどしょーガアマリニモヒトシレズミジカスギタノデ、かなしカッタ・・・)
『ヒルコ・妖怪ハンター』 ('91/SEDIC/塚本晋也)
『ニキータ』 ('90/フランス/リュック・ベッソン)
『マイ・プライベート・アイダホ』 ('91/アメリカ/ガス・バン・サント)
『あいつ』 ('91/キティフィルム+サントリー+NHKエンタープライズ/木村淳)
『グリフターズ』 ('90/アメリカ/スティーブン・フリアーズ)
『クライ・ベイビー』 ('90/アメリカ/ジョン・ウォーターズ)
『インディアン・ランナー』 ('91/アメリカ/ショーン・ペン)
『ワイルド・アット・ハート』 ('90/アメリカ/デビット・リンチ)
『狩場の掟』 ('85/中国/田荘荘)
『ミラーズ・クロッシング』 ('90/アメリカ/ジョエル・コーエン)

写真見出し
  • やっぱり悪い女が一番!  1991は『グリフターズ』と『ホット・スポット』につきる
  • ゴタールの『軽蔑』を入れるのを忘れた! 今年になってから観たので…
  • 1991のお間抜けヤローNO1はやはり『ハートに火をつけて』のチャーリー・シーンか? でもこいつも間抜けか…



地畑 寧子
愛と哀しみの旅路  (アラン・パーカー/90/アメリカ)
インド夜想曲  (アラン・コルノー/88/フランス)
インディアン・ランナー  (ショーン・ペン/91/アメリカ)
ケーブルホーグのバラード  (サム・ペキンパー/70/アメリカ)
グリフターズ  (スティーブン・フリアーズ/90/アメリカ)
ザ・コミットメンツ  (アラン・パーカー/91/アメリカ)
ステート・オブ・グレース  (フィル・ジョアノー/90/アメリカ)
ロザリンとライオン  (ジャン・ジャック・ベネックス/89/フランス)
ミラーズ・クロッシング  (ジョエル・コーエン/90/アメリカ)
ニキータ  (リュック・ベッソン/90/フランス)
ターミネーター2  (ジェームズ・キャメロン/91/アメリカ)
黄昏のチャイナタウン  (ジャック・ニコルソン/90/アメリカ)
ワイルド・アット・ハート  (デビッド・リンチ/90/アメリカ)
テルマ&ルイーズ  (リドリー・スコット/91/アメリカ)
ニュー・ジャック・シティ  (マリオ・V/ピープルズ/91/アメリカ)
シェルタリング・スカイ  (ベルナルド・ベルトリッチ/90/イギリス)
羊たちの沈黙  (ジョナサン・デミ/91/アメリカ)
ダンス・ウィズ・ウルブス  (ケビン・コスナー/90/アメリカ)
あの夏、いちばん静かな海。  (北野武/91)
アジアン・ビート アイ・ラブ・ニッポン  (天願大介/91)

〈ワースト〉
狼の眠る街・ストリートハンター
スーパーフライ
ブルージーン・コップ
プレデター2

〈特別賞をあげたい〉
「ツイン・ピークス」 (パイロット版も含め全作)
(この作品のおかげでピデオ漬けの日々を送り、完全に物語にハマルという体験をさせてもらった)

昨年は例年より観る数が少なかったので、 ベスト20にしようと思い、絞り込んだが決断力のなさからどうしても27になってしまった。 選外にもれた7本は、 『バックドラフト』 『スィーティー』 『ジェイコブス・ラダー』 『テラコッタ・ウォリア』 『ダークマン』 『ブルースに抱かれて』 『らせんの素描』。 まだまだ選びたい作品はあったけれど、相性の良さで妥当なところを選んだ。

ベスト20のなかに昔から好きなアラン・パーカーの作品が入ったのは、嬉しいところ。 しかし、『愛と哀しみの旅路』 は日本人がもっとも興味を示さなくてはいけない作品だったのに (本当は日本人が作るべき作品だった)興業的には芳しくなかったことをきいて、がっくりしている。 甘いとかなんとかいわれようと、パーカー監督にはこれからもがんばってほしい。

それに較べて、『ジェイコブス・ラダー』はあまリ相性がよくなかった (はっきリいって嫌いだった)エイドリアン・ライン監督の映画で初めて感動できた作品だった。 まるで期待しなかったせいもあるが、どれが現実なのか幻惑させられる手法に見事にのってしまい、 楽しめた。 『ホーム・アローン』で大嫌いだった、 マコーレ・カルキン少年もここではおとなしく、やっと好感がもてた。

昨年私にとってヒットだったのは 今まであまり好きじゃなく、避けていたホラー映画を観れるようになったことだ。 サム・ライミとかトビー・フーパーの作品は全くといって観なかったことは恥ずかしい。 その点で『ダークマン』 でサム・ライミの素晴らしさに初めて気が付いたのは遅ればせながらよかったと思っている。 『ターミネーター2』の派手なSFXに較べて地味ではあるが、凝った特殊メイクとSFX、 ストーリーの良さ(主演のリーアム・二ーソンは脇役でよく出ている人。 彼の苦悩が心を締め付けるほど伝わってくる)で肩を並べていいほどの作品だったと思う。

トビー・フーパーは今まで観る前に彼の作品のハイライトである残虐シーンばかりをみせられてきたせいか抵抗はあったけれど、 『スポンテイニアス・コンバッション』を観て、 彼の映画作家としての実力をまざまざをみせつけられたような気がした。 ちょうど、広瀬隆氏の「ジョン・ウェインはなぜ死んだか」を読むなど、 原子力問題に改めて関心を持ち初めていた時期だったので、 この作品が例のアトミック・シティの夫婦から生まれた男の悲哀を描いたものだったので妙に心に残った。 堅苦しい社会ドキュメンタリーで原子力問題を扱うのが事の重大さから推せばまっとうなのだろうが、 この作品の飛躍したストーリーもエンタテインメントという映画の中では面白いアプローチだと思った。

インデイアン・ランナー』はこの題材で、 まったくハリウッドの安直なヒューマニズムから切り離されたアメリカ映画だったことで、 大いに評価したい。最近私が求めていた映画はこれだったんだ、 と思わず声をあげたくなったくらいだった。おまけに、この作品が、 大好きなショーン・ペンの監督とくれば、喜びは倍増。 もう、俳優としてはスクリーンに出ないといっているけれど、 『ステート・オブ・グレース』で見せたあんな渋い演技をこれからも私は期待したい。

俳優の監督作という点では 『黄昏のチャイナタウン』は、ジャック・ニコルソンの映画人たる才能に驚かされた作品。 前作は私がことあるごとに見なおしている作品だが、続編も地味ながらいい作品。 前作の雰囲気をそのままに(脚本は前作と同じロバート・タウン) 時を現在にしても、ニコルソンのジェイクは変わっていない。 探偵という因果な商売を引きずった彼は、どんな作品よりも似合っている。 久しぶりに観たメグ・ティリーも相変わらずエキセントリックできれいだった。 この作品もきっと何度も見なおすことになるだろう。

タフな女が画面にぞくぞく登場してくる一方で、女性監督の作品もとみにふえたのもうれしいところ。 それがみんなちゃんとしたエンターテインメントになっているのもいい。 残念ながら、『ハート・ブルー』と 『エンジェル・アツト・マイ・テーブル』は見逃したが、 カナダのアン・ウィラー監督の『ブルースに抱かれて』は、 女性が成長するでもなし、タフでもなしの作品だったが、 普通の女性の気持ちが素直に描かれていて、好感がもてた。 就職しようにもなんにもない、なにもできない女性が子供に運動靴を買ってあげるために、 ちょっとしか弾けないピアノを頼りにバンドに入る話なのだが、不倫にも踏み切れず、 地方巡業を捨てて、結局戦地から帰ってきた夫と家庭を選ぶラストは保守的とはいわせない、 素直な女性の選択が描かれていてふっと涙がにじんできた。 彼女を連れ出そうとした男と戦地から帰ってきた夫の視線が絡み合い、 彼らが暗黙の了解をし、彼女の肩をぐっと抱く夫の気持ちにも何ともいえない思いがあふれてきて、 心が揺れた。

久しぶリに邦画で涙がでたのが 『あの夏、いちぱん静かな海。』。 あれは映画じゃないという声も聞くけれど、これはまさしく映画。 主人公に言葉のない映画は忘れていた画面から思いを感じとることを思いださせてくれた。 ラストにタイトルがふっと浮かぶ時に、最高潮の情感を伝えてくれた、監督の手腕に改めて拍手したい。 これくらい感動できる日本映画が今年もみられるだろうか。期待!

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