佐藤
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「女の監督かと思ってたの(笑)『めぐり逢えたら』と両方女監督だから 観ようっていうことかと思ったのよ。送ってもらった資料に男って書いてなかったし」
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地畑
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「私も女だと思ってた。でも普通わざわざ男だって断らないわよ。 ちゃんと読めば「兵役に行った」って書いてあるんだから」
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出海
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「私は男の人だと思って観てた」
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佐藤
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「私はこれ女流監督が撮ったなんてスゴイと思いながら観てたのよ」
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地畑
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「アン・リーじゃなくて、李安なら間違えないけど」
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関口
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「中国語圏の人の名前の表記は難しいわね。 『ラマン』のレオン・カーフェイとか」
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出海
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「カーフェイが名前?」
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関口
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「『悲情城市』のトニー・レオンとまぎらわしいから、 日本ではそう呼んでるの」
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佐藤
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「香港に女性の監督いっぱいいるでしょ。 でも私は台湾の女性監督って聞いたことがなくて、だからこのアン・リーのことを 台湾にもすごい女性監督が出て来たのかと思ったの。そしたら違うなんて、 今日はちょっとショックだわ(笑)。 内容としては、私は評論家が褒めてるほどいいとは思わなかった」
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出海
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「私は皆からいろいろ聞いていて楽しみにしてたんだけど、 ちょっとがっかりしたというか…。 アメリカや台湾人の事情について詳しくないからというせいもあるでしょうし。 だから主に筋について言わせてもらうと、結婚後ウェイウェイの妊娠が すぐにわかるでしょ。あの展開が早すぎると感じて、以後しらけちゃったの」
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皆
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「ああ、そういえば…」
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出海
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「両親が2週間滞在するって言ってたのに、 いくらなんでも2週間でつわりがくるとは…。途中で滞在が伸びたっていうことかしら?」
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地畑
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「確かに時間の経過が暖昧だった」
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関口
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「私もそう感じたけど、お父さんの具合が悪いって言ってたから、 1、2ヵ月滞在が伸びたのかもしれない」
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出海
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「その上、妊娠したらその後の展開にきっと子供がからんでくるんだろうから、 その時点で先が見えちゃったのよ。ウェイウェイが三角関係を続けて行こうというのは、 子供ができたからでしょ? 子孫を残していこうっていう、アジア人的な。 三人が離れないでいようっていう決め手なの。大事なのよ、子供は。 でも、そういうゲイのカップルが子供を育てる話って アメリカ映画には今までにもあったでしょ、『トーチソング・トリロジー』とか。 だから目新しい話ではないし。ただ、台湾人としたら目新しい題材なのかもしれない。 ベルリンでグランプリ取ったのもヨーロッパ人にとってアジア人に甘いっていうか、 目新しいのもあるんじゃないかしら?」
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関口
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「一緒にグランプリ取ったのが中国の『香魂女』、あれも 超大陸的な作品だよね。あれに比べると『ウェディング・バンケット』はあか抜けてる」
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佐藤
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「『ウェデイング…』の方が全然いいわよ。 『香魂女』は根性物すぎるのよ(笑)」
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出海
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「私は『ウェディング…』より『きらきらひかる』の方がずっと良かった」
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地畑
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「出海さんと同じ意見が香港の『電影双週間』って雑誌に出てましたよ。 『きらきらひかる』では、笑子がゲイの二人の精子を合わせて 三人の子供をつくりたいって言うのに、『ウェディング…』では偶然できた子供を 堕ろさずに三人で育てていこうというのは感情面の突っ込みが足りないって」
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佐藤
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「結局この映画は三人で暮らすことにしたけど、誰かがそのう ち不満になるんじゃないかしら? あるいはウェイウェイが他の男性を見つけるようになるのか…?」
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出海
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「その後が気になるわね。テレビの『同窓会』も夫がゲイで 偽装結婚する話なの。こちらの終わり方は夫婦が離婚して納得いったけど、 『ウェディング…』の方は女はどうすればいいのって思う」
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佐藤
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「私も女がかわいそうだと思った。男二人は愛し合ってるのに」
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地畑
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「でも彼女はグリーンカードを取るための結婚だったんだから、 それでいいんじゃないの?」
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佐藤
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「でも彼女はウェイトンのこと好きみたいじゃない? 確かに初めは彼を利用してグリーンカードを得ようという、それはそれで たくましい生き方だけど。その後彼の両親と仲良くなるし、子供もできてしまうでしょう」
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出海
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「愛情が移って来ちゃうのよ」
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佐藤
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「だからなんとなく彼女がせつなくなってくるの。 ウェイトンの恋人のサイモン、彼は女性らしいというかやさしい人で、 それが描かれてたから、このカップルがとても自然に見えたんだけど。 だから余計彼女を加えて暮らすのがかわいそうに見える。 彼女はウェイトンが好きなのに、彼はサイモンと二人のベッドに寝て、 彼女は独りぼっちだなんて」
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出海
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「ただ、台詞とか動きはとても面白いよね」
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地畑
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「披露宴でアメリカ人が「中国人は静かな人種だと思ってたのに」 って言う場面とか」
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関口
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「日本の披露宴と似てますよね」
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出海
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「そうね。でも華やかさがすごい。それに新郎新婦の部屋に皆が 押しかけて来ちゃうのが面白い」
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関口
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「日本はヨーロッパ的というか、 新婚旅行やらイベント化してきちゃったけど、こちらはまだ土着的な雰囲気が残ってる」
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佐藤
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「たくさんお客さんを招んだりしたけど、すべて親のためだったということよね」
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出海
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「関口さんと地畑さんはとても面白かったって意見ね」
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関口・地畑
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「面白い、面白い」
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関口
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「日本映画でも、こういう題材で作れそうだけど、 いざ出来てみたらこういうふうには作れないなって感じ。アメリカ人を加えた関係は 日本映画では描けないな」
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地畑
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「日本人ではよそでの生活ってできないよね。 足が地にめりこんじゃってて」
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関口
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「彼らがこうやって溶けこめてしまうのがうらやましいよね。 日本人のビジネスマンがアメリカに行くと『ライジング・サン』にしかならないのかな」
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出海
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「日本人の監督が向こうで撮ると、原田真人みたいに 無国籍みたいになっちゃう」
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地畑
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「無国籍にしかならないんだと思う」
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関口
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「この作品で台湾人と上海人がアメリカで結婚式を挙げるじゃない? 『月はどっちにでている』では北朝鮮人と韓国人の結婚式があったけど、 結婚式バトルになっちゃうのね。それに比べたら台湾映画の方が余裕がある。 そこにも日本映画と中国語圏映画の違いが出ちゃって、日本映画はメじゃないなって感じ。 あと面白かったのは、NYで撮ったのにいわゆるNYらしさがないでしょ? 普通のアメリカ人が撮るものと違うし、日本人が行くような所でもない。 だけど取って付けたようなものじゃなくて馴染んでるんですよ」
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地畑
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「ウェイウェイの部屋がアメリカらしい部屋なのに、 中国語の歌がガンガン流れてるのとか」
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関口
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「そういう自然さがすごいと思う。日本のビジネスマン、 いわゆる企業戦士みたいな人達には絶対馴染めない風景だと思う」
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出海
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「そうね、そういう人達は馴染まないわね」
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地畑
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「うんうん、たくましいよね。女はグリーンカード目当ての結婚だし、 男の側から見ても、結婚すれば税金が安くなる特典に気がついて サッと頭を切り替えるじゃない? ああいうの、日本人には出来ないわよ」
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関口
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「あと私が面白かったのは、ウェイトンがアメリカで市民権を得て 働いているから、台湾の両親に仕送りをしてあげてると思ったの。 そしたら両親が結婚のお祝いにいっぱいお金を持って来たでしょ。 だから違ったのね。実家がお金持ちなのよね」
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佐藤
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「最初から実業家だっていうから、親が投資したのよ」
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出海
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「香港や台湾の映画監督とかでも、ロンドンに留学してたりして、 そういうのは元々お金持ちなのよ。そこが日本と違うところなのよね」
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関口
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「お金があるから海外に子供を出してあげられる。 そこが「ここにいてもしょうがない」って出てくる日本人と違うのね」
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出海
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「お金がない、それで海外に出たい人は難民になるってことかしら。 日本人は難民にまではならないけどね」
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佐藤
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「日本はとにかく有名大学を出ればエリート。 でも向こうはそんなことはなくて、海外で自由に才能を伸ばして帰って来いってことよね。 日本人もそういうふうに自由であればいいのに、 帰って来ても経験を生かす機会がないのが問題だと思う」
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関口
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「そういうところで、いつかアジアの中で取り残されて行くんではないかと思いますよ」
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地畑
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「だから才能ある人は、向こうに留まって就職しちゃう」
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佐藤
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「でも日本にもお金持ちの人はいると思うんだけど、どうしてそういう人は出て来ないの?」
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地畑
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「お坊ちゃんはダメなのよー(笑)」
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佐藤
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「お坊ちゃんには気概がないのね。他のアジアの人達のようにもっと自分たちを良くしようとか」
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関口
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「同じアジアの国なのにどうしてこう日本と違ってきたのかなって思った。 日本は映画ではとっくに追い抜かされてますね」
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出海
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「日本人でも留学して映画を勉強してる人がたくさんいるけど、 帰国して日本人を描く作品を撮れる人がいないっていう問題を考えさせられた映画だと思う。 結果的に関口さんと同じ意見だと思うわ」
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佐藤
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「日本人は向こうに行くとアメリカナイズされることばかり必死で、 日本の文化を大切にしようとは思わない。もちろん小津安二郎を評価したりはするけど。」
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出海
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「日本人としてのアイデンティティを大切にしないというか」
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関口
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「向こうへ行くと日本人であることを捨てちゃうんだ」
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佐藤
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「そこがかっこつけてるように見えるんだよね。 台湾人は自分たちの歴史を負っているけど。台湾は歴史が浅いので、 文化を作って行こうという意志があるからかもしれない」
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関口
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「そこのところでどんどん追い越されてしまうのね」
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佐藤
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「そう、バイタリティというかね」
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出海
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「今日本は経済的にも、モラルの面でも崩れてぐちゃぐちゃでしょう。 そういう時にこういうことを考えて努力したら、何か生まれてくるのではないかしら?」
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佐藤
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「あまりに豊かだと出て来ないんじゃないの?」
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出海
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「最後になったけど、地畑さんはどうだった?」
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地畑
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「この映画は、さっきの妊娠についてとか細かい問題点はあるけど、 私はとても面白かった。コメディ仕立てでごまかしてると言われるかもしれないけど、 笑える映画にしたのが良かったと思う。 女らしいとか男らしいとかの垣根がどこの国でもなくなってきていることの表し方が、 好感を持てたの」
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出海
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「それは同性愛を描く映画では必ず出てくるわね」
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佐藤
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「親が理解するという終わり方が、私はとても良かったと思うわ。 普通なら拒否してしまうだけだけど、若者の新しい生き方を受け入れてあげるのが、 いいわね」
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関口
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「母親は拒否反応があるけど、父親は理解したのよね」
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地畑
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「それはちょっと飛躍してたと思う。元軍人なのに あんな柔軟に理解を示すなんて」
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出海
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「実は英語をしゃべれたっていうのも、がっかりしたわよ」
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地畑
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「そういうところ、コメディだからごまかせるのよ」
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出海
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「でも台湾人がアメリカやホモセクシャルの世界に共存してるのを 違和感なく描いているのはすごいと思った」
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関口
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「主導権を握っているのはアジア人なのよね。 女らしいのがアメリカ人(サイモン)で、男らしいのがアジア人 (ウェイトンとウェイウェイ)っていうのも、今までとは逆でね」
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地畑
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「国際性もからんでるのよ。ウェイトンが両親に彼女は 大陸の出身だと言っても、「元は同じなんだから」って拒否反応を示さない。 これは監督が台湾から海外に出た、グローバルな視点を持っているからかもしれない。 台湾と大陸の関係では、こんなに寛容な人ばかりじゃないと思うし。 その二国の間にはさまっている香港が97年に中国に返還されたら、 この三者の緊張がどうなっていくのか、 映画界も含めて平和な方向に進んでくれたらいいなと思ってるの」
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出海
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「そうね、若い台湾人の監督が こういう国際性を織り込んだ作品を作ったっていうのは、すばらしいことよね」
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◆ウェイトン役のウインストン・チャオはどこかで見たような顔! 巨人の桑田投手(出海)、[野村宏伸+村上弘明]÷2(関口)。 また、ウェイウェイ役のメイ・チンは黒木瞳で全員意見一致。
ちなみに私は、ウインストンのムッとした時の顔が、 ガンを飛ばす的場浩司に見えて笑っていました。あと、メイ・チンは [黒木瞳+風吹ジュン]÷2で、母親役のグア・アーレイは南田洋子だと思います。
Y. 勝間
93年はカンヌもベルリンも東京でも、映画祭のグランプリを中国語圏の作品が ほぼ独占した。特にベルリンでは、台湾の『ウェディング・バンケット』と中国の 『香魂女』が同時受賞ということで、しかも『ウェディング…』は、 『きらきらひかる』のような人物構成に、 『グリーンカード』のようなアメリカの結婚事情がからんでくると聞いて、 非常に楽しみだった。そして、事実私の期待は裏切られるどころか、 大いに笑って時にホロリと泣いた2時間弱だった。 こういうレベルの高い作品がアジアの、しかも同じ漢字文化国出身の監督から生まれて、 欧米でも評価されていることは、とても誇らしい。
私にはこの作品の登場人物たちの感情の機微が、同じ東洋人としてよく分かった。 例えば、豪華な披露宴を単純に望む親の世代と、披露宴なんてどうでもいいのに 親孝行のために仕方なく…という若い世代。リー監督自身は偽装結婚でこそないが、 NYで市役所結婚式で済ませたため、故国の両親から非難囂々だったという。 私自身も日本のエスカレートする結婚産業に疑問を抱いているので、 同じアジアの若い世代のリー監督のこのエピソードを読んで、なんだか 嬉しくなってしまった。
また、東洋人ならではと思うのは、息子がゲイであることをそれぞれ知った両親が、 互いに相手のために秘密にしておこうとする心理。自分さえ黙っていれば、 相手が幸せなままでいられるから、と。
母親は息子から告白されてショックを受けるのだが、それでも夫の手前 平静を装っているうちに、だんだんサイモン(息子の恋人)に慣れていくようだ。 これは世の典型的な母親族の順応パターンだ。
しかし母親よりも英語が理解できる父親は、告白を待たずに息子とサイモンの関係に気がついた。 ところが世の父親族と違って、彼は怒り出したりはしなかった。沈黙を守り続けて、 終盤になって彼はサイモンとそして我々観客に、私は分かっていると告白するのだ。
彼にゲイに対する拒否感情がなかったとは断言できない。しかし、 彼は彼の息子や嫁の世話を焼き、自分たち夫婦にも親切であるこの白人青年に、 帰国間際に、自分にもう一人息子ができたようだと感謝するのである。 たぶん彼は初め妻を驚かさぬよう、そして偽りの親孝行の芝居をする息子の努力を 空しくせぬよう、自分一人の胸に納めておくつもりだったのだろう。
余談だが、観客の私から見てもサイモンの優しさは魅力的だ。 私自身ウェイウェイのように家事が苦手で、ウェイトンよりもサイモンの方が 理想的な夫に見える(彼女は逆にウェイトンが好きなのだが)。 優しくて家事の得意なサイモンは『きらきらひかる』の原作の方の睦月に似ている。 もっともサイモンは《夫》という役割には興味がないかもしれない。
父親とサイモンの触れ合いが描かれる一方で、母親は息子の嫁のウェイウェイに 昔の自分の花嫁衣装を着せ、あれこれ世話を焼く代わりに、 「今の若い女性はやりたいことができて羨ましいわ」などと愚痴をこぼす。 一人息子で、しかも台湾から離れてアメリカに住むウェイトンには、 女性としての愚痴は聞いてもらえなかった。話相手ができた嬉しさは、 ウェイウェイが大陸の出身であろうと変わりはない。