女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
[シネマジャーナル]
28号(Feb. 1994)   pp.55--58

映画 LIVE HOUSE “この映画をチェック”


  『ザ・シークレット・サービス』
  『逃亡者』
  『硝子の塔』
  『クリフ・ハンガー』
  『レッド・ロック 裏切りの銃弾』
  『ウォーター・ダンス』



このコーナーでは、配給会社が眉にツバつけて(?)売ろうとがんばった(ている)映画を その映画のキャッチコピー(茶色表示)もつけて わたしたちが独断と偏見でチェックします。

思わず涙してしまう感動ものあり、頭にくる映画あり、どうにかしてくれ〜としか いえない映画あり。

あなたのチェック度はいかがですか?

ご意見・参加をお待ちしています!!!!!




ザ・シークレット・サービス

JFKを守れなかった一人の男
そして、30年後1本の電話がかかる
「大統領を殺す…。これはゲームだ」

『許されざる者』は良かったのにねー。 同じ人が出てるからっていいとは限らないのね。

『JFK』+『ボディガード』、柳の下のどじょうはセコイ。

私の一番の不満は、なぜシークレット・サービス同士 (イーストウッドとレネ・ルッソ)が就寝時間だからといって 勤務中に寝ようかとするかということ。 気分が盛り上がってきたところに、緊急連絡の電話がかかってきちゃうんだけどね。 生命に関わる職業でのオフイス・ラブは、私は厳禁だと思う。 レネ・ルッソの役は優秀な人物で、クライマックスでの主人公の危機にも 冷静に対処する拍手ものの場面もあるのだが。 犯入役にぴったりだと思ったジョン・マルコビッチは政府に恨みを持つ元CIA。 これではまるで『沈黙の戦艦』のトミー・リー・ジョーンズ、 でも大統領個人に恨みはないだろうに。CIA長官を狙ってみろってんだ。

(雀)
(ウォルガング・ぺーターゼン監督作品)




逃亡者

A MURDERED WIFE.
A ONE-ARMED MAN.
AN OBSESSED DETECTIVE.
THE CHASE BEGINS.

お化けTVと言われるほど本国でも日本でも高視聴率を獲得したのがTVの「逃亡者」。 その時代を知っている人の中では「この映画はイマイチ」の声も聞いたが、 当時を知らない私にとっては、ビデオで予習していったもののやはりこの映画の方が 断然面白かった。つまりはリアルタイムで、もとネタを観たか観なかったかで、 感動の度合いも違ってくるということで、人気TVシリーズの映画化っていうのは 結構リスキーな面もかなり背負ってるわけだ。その点を考慮してか、 当時のTVを知らない人を主なターゲットにしているのがアリアリなほど、 この映画はかなりのハイテンポ。 事件の発端を回想する編集も斬新だし、間抜けな他の警官達を尻目に 明噺なジェラール連邦保安官補のチームが走リ回るシーンを迎えうつカメラワークも 観ている方がドキドキするほど動的。

ちょっと映画を観ている人なら"こいつが真犯人かも"とわリと簡単に見抜けるのだが、 逃亡しながら真犯人を見つけて自分の身の潔白を晴らさなくてはならないという 二重の枷を背負ったキンブル博士と彼を執念で追い掛けるジェラール連邦保安官補 (元ネタでは警部)の頭脳合戦にのせられて長時間もあっという間。 特に二人が鉢合わせになって寸でのところで逃げ切るシーンを一度で終わらせず、 観客に緊張を解かせないところはさすが。この緊張はストーリー展開のよさ (結末は賛否両論あるだろうけど)はもちろんだが、 捜査に執念を燃やすあまりに悪人に見えてくる"ジェラール" トミー・リー・ジョーンズのおかげかもしれない。

単なる謎とき映画として観れば、物足りない点もあるかもしれないが、 TVシリーズには多々あったらしい甘いロマンス場面抜きで、 一気に駆け抜ける逃亡劇はそうざらにできるものじゃないと感じた。

(Y)
(アンドリュー・デイビス監督作品)




硝子の塔

見たいですか——
それとも見られたいですか

私は結構シャロン・ストーンが好きである。だって綺麗なんだもん。 あの美貌だけでもいわゆる美人女優として十分食べていかれると思うのに、 Hな作品に堂々と出てるところがすごい。マドンナもそうだけど、 女の子に嫌われないのは、自分が主導権を握ってHしているからだと思う。 男性客ばかりが対象のポルノやAV女優と違って、彼女たちは全世界に向けて 自分のエロスを売り出している。日本の女優は猫も杓子もヘア写真集で、 これでは脱がない女優の方が希少価値が高まるであろう、シャロンのように、 もっと賢く自分を売ることができないのかね?

この作品の宜伝も、シャロンの悶えるアップが売リ。『氷の微笑』 でつかんだ固定客(?)を集めようという、シャロンと映画会社の両者の思惑であろう。 実際、映画の中でもバスルームで、そしてウイリアム・ボールドウィンとの絡みで、 彼女の悶えの大サーピスだった。謎の人物が彼女の入浴やセックスライフを 覗いているのと同時に、我々観客もスクリーンの中の彼女を凝視しているのだ。 そう、我々も謎の人物とシャロンを共有しているということだ。

まあこれほど堂々としたシャロンだから、《離婚して愛に臆病になった》 という設定には「嘘でしょー」と笑ってしまうのだが。 彼女が臆病になるなんて有り得ない! フェロモンを撒き散らして、 お楽しみの相手を集めるには困らないんじゃないの一?  さて、シャロン見ること以外にも私の楽しみはあった。クセ者ぞろいの共演者である。 私の大好きなトム・ベレンジャーが、W・ボールドウィンとシャロンを争う推理小説家。 でも嫌な役だった…。 もう一人『バグダッド・カフェ』のCCHパウダーが女警部だというので、 非常に楽しみにしていたのに、出番が短かった。 この二人についてはちょっと寂しい結果になったけれど、 シャロンの隣人役のポーリー・ウォーカーが、シャロンとはまた異質の色っぽさで 魅力的だった。顔立ちがはっきりしていて、エキゾチックな雰囲気だから、 これからどんどん売れっ子になると思う。

余談だが、パンフレットの監督紹介に『パトリオット・ゲーム』の原作者が 《ジャック・ライアン》となっていた。それは主人公の名だぞー。

(雀)
(フィリップ・ノイス監督作品)




クリフハンガー

上映中、目が眩みますので
下を見ないようご注意下さい!

やっぱリシルベスター・スタローンにはアクションが似合う。 別にファンじゃないけれどそう思う。あれだけの肉体をしているんだもの、 馴れないコメディより得手に活かしたほうがいいに決まってる。

でも、この映画の見所はなんといってもものすごく目の回るような冬山での撮影。 よくあそこまで出来るなあと感心することしきリ。富士山より高いんだもの。 高所と寒いところが大嫌いな私は、『K2』を観たときでもめまいと寒気がしたが、 ここでは欲張って大画面の映画館で観たため、巻頭いきなリ、 初心者の女性の命綱が切れて彼女が落ちて行くシーンから始まり、 輸送機乗取りの場面(飛行中の飛行機から飛行機へ物のみならず 人が乗り移ろうとするんだからスゴイ!)も含めて、映画館を出るときにはふらふら。 それほどの撮影です。

それにかなりのスタントを使っていたようだけど、 よくみると各々俳優自身もとくにスタローンはあの悪条件の中で体を張って 冬山と格闘しているところがありあり。 全く頭が下がる思いです。

その分?ストーリーはいたって大変わかりやすい。ジョン・リスゴーの 大仰な悪顔づくりが笑えるほどすごいしネ。

それにしても"ヘンリー" マイケル・ルーカーが、この手の映画に出てるなんて意外 (もっとも『デイズ・オブ・サンダー』で、トム・クルーズの敵役もしてたんだけど)。 で、彼ってよくみると結構筋肉質な人だったんですねえ。 にょきっと出た二の腕が逞しくて、ドキっとしました。 セクシーって言われているスタローンじゃなくて、 マイケル・ルーカーをこんなふうにみてしまった私はやっぱり変なのかなあ。

(Y)
(レニー・ハーリン監督作品)




レッドロック 裏切りの銃弾

わりとこじんまりと公開されてた作品だけれど、これが意外と拾い物の一作。 男三人に女一人の四人の騙し合いの果てに誰が生き残るかと観ている側も 翻弄されっぱなし。舞台も荒涼とした砂漠の町。 バックには気怠いカントリーバラードが流れる。 脱出しようにもなぜか出ていけない魔力を秘めた町レッド・ロック。 ニコラス・ケイジ演じる放浪者が、人はいいけれど、あいまいな性格だけに歯痒い。 そこに付け込むララ・フリン・ボイルの徹底した悪女ぶりもスゴイ。 これにクールな殺し屋デニス・ホッパーと彼女を抹殺しようと企む夫(J・T・ウォルシュ) が入れば、面白くないわけがない。

プロットそのものは、監督の前作『もう一度殺して』とは似ているけれど、 人が変われば品も変わるで、前作がいかにもサスペンスの味わいだったのに対して、 こちらは、がっぷりよつのコンゲーム。二作を続けて観て楽しむのもいいかも。

『ツイン・ピークス』で火がつき、一躍有名女優になったララ・フリン・ボイル。 今年公開になった『アイ・オブ・ザ・ストーム』『派遣秘書』(ビデオのみ) とこの三作で悪女役がすっかリ板についたよう。 『ウエインズ・ワールド』でのちょいとパーな女の子と同一人物とは思えないほどの 変化ぶり。確かにシガニー・ウィーバーを始め骨太なハリウッド女優に交じれば、 線は細いし、容貌も小作リ。でもまだ23歳にしてあの色気。 かなりの女優になるんじゃないかと期待はふくらむ。

(Y)
(ジョン・ダール監督作品)




ウォーター・ダンス

車椅子の生活を強いられた人たちの病院での大部屋生活を描いたものなのだが、 湿りっ気がなく妙に明るいところがいい。いかにもの病院のにおいがしないところも そのひとつ。大部屋での人種も年齢も雑多な人たちのやりとりもそのひとつ。 特に妻子に見捨てられている寂しさを陽気なホラ吹きでごまかしている ウェズリー・スナイプスのしゃべりは周囲に見栄をはっている分、 哀しくもありとってもおかしい。

しかし、この作品のホントの明るさは、これからの人生、体は自由がきかないが、 精神的には自由でいることの大切さを主人公の三人が、この大部屋生活で対立や反発、 自己嫌悪を繰り返しながら悟っていく逞しい姿なのだと思う。

だが、体が不自由である以上、性生活の心配もある (障害者の性の問題にまで深く言及しているところもこの作品の良いところ)。 主人公のジョエルの場合は特にだ。悩み抜いた後彼は彼女に恋人としての別れを決意する。 彼は彼女の幸せを思い、彼女は自分の存在が彼の重荷になってはいけないと思ったのか、 ラストシーンで病院を後にするふたりの姿はいたって晴れやかだ。 ふたりはこれから、よき友人として絆を深めていくのだろう。 ジョエルは仲間のブコスと気心の知れた者同士の短い会話をする。 彼に射す日差しは優しく明るい。実にさわやかな幕切れだった。

(Y)
(ニール・ヒメネズ&マイケル・スティンバーグ監督作品)

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