工夫のないストーリー、気が利いているともいえない会話、豪華とは言い難い衣装、 魅力に乏しい主演、これが、ヒットしたって? (みんなこんな安上がりな“夢”で満足するよーになったのだろうか?)
現代版『マイ・フェア・レデイ』というコピーにはびっくリ。 かのバーナード・ショウの軽妙で格調高い原作、 映画の夢を集めたような衣装、それを身に纏うヘップバーンの美しさと可憐さと・・・ 言い出せばキリがないのでやめるけど、 服だけ替えれば売春婦がトップレデイになるなんて、そりゃ“夢”じゃなくて“嘘”だ!!!! あっやっぱりキリがない。
(R) (ゲーリー・マーシャル監督作品)
『ルーキー』
ピカピカの新米(ルーキー)と百戦錬磨のベテランが火花を散らす! |
|
だてにうん十年アクション映画をやってきてるわけじゃないんだ、 クリント・イーストウッドっていう映画人は。 俳優としてはもちろんだけれど、 『バード』を観たときは名優も名監督になれるんだなっとつくづく感じた。 (申し訳ないけれど『ホワイトハンター・ブラックハート』は未見) 今度は文字どおりの刑事アクション。この娯楽作もうまい、うまい。
さすがに『フレンチ・コネクション』には及ばないけれど、 『ブリット』程度にいっているカーアクション。 この前半のカーチェイスは見ておかないとこの手が好きな人は損。 主演のチャリー・シーンのいいところは全部引き出して、自分は道化て引き立てる。 どっかで観たシーンをふんだんにうまく使いこなす。 初めと終わリのシーンは反復させる。これがちっともクサくない。 映画を面白くさせるツボをよくわかった人しかこのよさはでてこないのかもね。 やっぱりイーストウッドはすごい。
(Y) (クリント・イーストウッド監督作品)
ベトナム戦争映画群の楽屋落ちというか、番外編として観ると結構楽しめる。 設定は71らしいから終結まであと2年くらいの時期らしい。 とはいうものの、ロバート・ダウニー・Jrくらいの若いもんが呑気にロスかなんかで働いているというのはどーしてなんだろう、 最後まで気にはなっていたんだけど。
このエア・アメリカというウルトラ、マルチ宅配便 (兵器から亡命者までいつでもどこへでも運びます)が実在していたのにはちょっとお勉強。 民間航空ながら国家単位でなんと麻薬まで運んでたらしい。 というのも、エア・アメリカそのもの基地も人もすべてが国から存在しないものとされていたかららしいが、 油断もスキもないのが国家というものか。
ひ弱で無能な上官に武骨で歴戦の賢い部下たち。 これがなくてはストーリーにならないけれど、 この単純なストーリーなしにしても片意地はった反省、 反戦のベトナム戦争作品群にはない醒めた感じが結構心地よかった。 配給会社からすれば、メル・ギブソンというドル箱スターのアクション&コメディなんだろうけど、 さすがに『アンダー・ファイァー』を撮った監督だけに、 もはや国家には存在しない彼らは忠誠をつくしてるんだか、厭世的になってるんだかあいまいで、 彼らが生死を共にした家族で明暗の気分の交錯が激しいあいまいなニュアンスをさりげなくだしていた。
(Y) (ロジャー・スポティスウッド監督作品)
周知の通り、これは55年の『必死の逃亡者』のリメークなわけだけれど、 夫の浮気のせいで不和になった家庭がこの事件で元に戻るというのはいかにも現在。 初めにその不和のために「家」が売りに出されていた伏線とあわせて、 警察の力より自力で我が家を闖入者から守りっきった家長の名誉挽回という最後を観ると 結構凝った現代劇になっている。
のっけから猛スピードの車の姿を追い、ケリー・リンチのモデルばリの長く、 きれいな足で目をひきつけ、法廷での茶番を演じて、M・ロークが脱走をはかるまでは、 スピーディで、一家にたてこもってからはしっかリとした室内劇で 緊張感を高めていくあたリは手慣れていて、まだまだM・チミノはなんといわれようと健在のようだ。
『ドラッグストア・カーボーイ』ではかっこいい女だったケリー・リンチはここでは、情けない女。 クールビューティーの久しぶリの登場にワクワクしているとこれがとんでもなく 弁議士とは思えない情けなさで、最後まで恋路をまっとうするかと思えば、 あっけなく警察の保護下にはいって一時は生死を共にしようとした男(M・ローク)を売ってしまう始末。
一方のローク等強盗に入られた家の奥さんの気丈なこと。 単純に2人の女性の比較をしながら観るのも一考。
とはいってもどうしても注目が集まるのはローク扮するマイケルという凶悪犯罪者。 賢明で、一見紳士的、そして冷静。 しかし、内面は非常に情熱的で一途に女を待つ男である。 刑事よりもなによりもやはり彼には犯罪者が似合う。 その上に愛を待ち続ける純な面が加わった。 この作品での彼と未公開の『レイプ&マリッジ』を観ると、 愛情にすがる男の純粋さとそれに裏切られた男の情けなさを垣間見ることができそうだ。 ミッキー・ロークは好むと好まざるの落差がかなり大きい俳優のようだが、 お茶の間のアイドルになろうとやはり、今を代表する危険な香をたたえた、セクシーで、 陰の魅力のある稀有な俳優なのだろう。 チミノ監督が惚れ込んだ才能、冷たい氷から一気に火が燃え立つような、 冷静で紳士的なな犯罪者が豹変して恐ろしい形相で暴力をふるう演技は 彼ならではの凄味がそなわっていた。
(Y) (マイケル・チミノ監督作品)
|