女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
[シネマジャーナル]
18号 (1991.04)   pp.50--53

映画 LIVE HOUSE “この映画をチェック”


『ヘンリー&ジェーン』  
『大誘拐 -- Rainbow Kids』  
『プロジェクト・イーグル』  
『プリティ・ウーマン』  
『ルーキー』  
『エア・アメリカ』  
『逃亡者』  


今回4回目のこのコーナーでは、 配給会社が眉にツバつけて(?)売ろうとがんばった(ている)映画を その映画のキャッチコピー(茶色表示)もつけて わたしたちが独断と偏見でチェックします。

思わず涙してしまう感動ものあり、頭にくる映画あり、どうにかしてくれ〜としかいえない映画あり。

あなたのチェック度はいかがですか?

ご意見・参加をお待ちしています!!!!!




ヘンリー&ジェーン -- 私が愛した男と女

美しいセックスシーンが夢のように繰り広げられる。 なのに陶酔できないのはナゼ? とかんがえたら男優陣に魅力がなかった。 同じ監督の前作『存在の耐えられない軽さ』との徹底的な違いはそこある。 それに登場人物達の心情的な部分があまり伝わってこない。 ヒロインのアナイス・ニンを演じるマリア・デ・メディロスの 往時のリリアン・ギッシュを思い起させるような不思議な魅力に 映画そのものが傾倒しすぎてしまったせいかもしれない。(M)

(M)
((フィリップ・カウフマン監督作品)


大誘拐! -- RAINBOW KIDS

パンパンパンパンとリズムよく映画はどんどん進んでいく。 明るい楽しい映画だけど、何だか今いちスリリングに欠ける。 主人公のおばあちゃんのキャラクターにのれるかのれないかで この映画そのものにのれるかのれないかがき決まっちゃうでしょうね、きっと。

一見単なる娯楽映画みたいだけど、よく考えるとこれは反体制の映画で、 監督の一貫したきちんとした態度には頭が下がる。

(M)
(岡本喜八監督作品)


プロジェクト・イーグル

ヒトラーの黄金を求め、灼熱のモロッコ砂漠へ—!

2年ぶりに楽しさ満載! ジャッキーが挑むエキサイト・ミステリー!

お客さまを楽しませるというよりも、ジャッキー・チェン自身が“死ぬ気”で映画を楽しんでいるというか、 ここまでやられたらもー文句ありません。 超弩級のアクションにはストーリーなんか邪魔ということをジャッキー自身が熟知していて、 キャラクターもシンプルこの上なし。 観客はひたすら観て楽しめばヨシ。

オープニング、巨大なカルデラ湖でのつりの高空撮影、山脈をころがる気球(?)。 全て映画ならではのスケール、迫力。

みんなラストクレジットのNG集を観終わるまでは、席をたってはイケナイヨ!!

(R)
(ジャッキー・チェン監督作品)




プリティ・ウーマン

工夫のないストーリー、気が利いているともいえない会話、豪華とは言い難い衣装、 魅力に乏しい主演、これが、ヒットしたって?  (みんなこんな安上がりな“夢”で満足するよーになったのだろうか?)

現代版『マイ・フェア・レデイ』というコピーにはびっくリ。 かのバーナード・ショウの軽妙で格調高い原作、 映画の夢を集めたような衣装、それを身に纏うヘップバーンの美しさと可憐さと・・・ 言い出せばキリがないのでやめるけど、 服だけ替えれば売春婦がトップレデイになるなんて、そりゃ“夢”じゃなくて“嘘”だ!!!! あっやっぱりキリがない。

(R)
(ゲーリー・マーシャル監督作品)




ルーキー

ピカピカの新米(ルーキー)と百戦錬磨のベテランが火花を散らす!

だてにうん十年アクション映画をやってきてるわけじゃないんだ、 クリント・イーストウッドっていう映画人は。 俳優としてはもちろんだけれど、 『バード』を観たときは名優も名監督になれるんだなっとつくづく感じた。 (申し訳ないけれど『ホワイトハンター・ブラックハート』は未見) 今度は文字どおりの刑事アクション。この娯楽作もうまい、うまい。

さすがに『フレンチ・コネクション』には及ばないけれど、 『ブリット』程度にいっているカーアクション。 この前半のカーチェイスは見ておかないとこの手が好きな人は損。 主演のチャリー・シーンのいいところは全部引き出して、自分は道化て引き立てる。 どっかで観たシーンをふんだんにうまく使いこなす。 初めと終わリのシーンは反復させる。これがちっともクサくない。 映画を面白くさせるツボをよくわかった人しかこのよさはでてこないのかもね。 やっぱりイーストウッドはすごい。

(Y)
(クリント・イーストウッド監督作品)




エア・アメリカ

空飛ぶウラの宅配便!

ベトナム戦争映画群の楽屋落ちというか、番外編として観ると結構楽しめる。 設定は71らしいから終結まであと2年くらいの時期らしい。 とはいうものの、ロバート・ダウニー・Jrくらいの若いもんが呑気にロスかなんかで働いているというのはどーしてなんだろう、 最後まで気にはなっていたんだけど。

このエア・アメリカというウルトラ、マルチ宅配便 (兵器から亡命者までいつでもどこへでも運びます)が実在していたのにはちょっとお勉強。 民間航空ながら国家単位でなんと麻薬まで運んでたらしい。 というのも、エア・アメリカそのもの基地も人もすべてが国から存在しないものとされていたかららしいが、 油断もスキもないのが国家というものか。

ひ弱で無能な上官に武骨で歴戦の賢い部下たち。 これがなくてはストーリーにならないけれど、 この単純なストーリーなしにしても片意地はった反省、 反戦のベトナム戦争作品群にはない醒めた感じが結構心地よかった。 配給会社からすれば、メル・ギブソンというドル箱スターのアクション&コメディなんだろうけど、 さすがに『アンダー・ファイァー』を撮った監督だけに、 もはや国家には存在しない彼らは忠誠をつくしてるんだか、厭世的になってるんだかあいまいで、 彼らが生死を共にした家族で明暗の気分の交錯が激しいあいまいなニュアンスをさりげなくだしていた。

(Y)
(ロジャー・スポティスウッド監督作品)




逃亡者

愛されていれば、
逃げ切れると思ってた。

周知の通り、これは55年の『必死の逃亡者』のリメークなわけだけれど、 夫の浮気のせいで不和になった家庭がこの事件で元に戻るというのはいかにも現在。 初めにその不和のために「家」が売りに出されていた伏線とあわせて、 警察の力より自力で我が家を闖入者から守りっきった家長の名誉挽回という最後を観ると 結構凝った現代劇になっている。

のっけから猛スピードの車の姿を追い、ケリー・リンチのモデルばリの長く、 きれいな足で目をひきつけ、法廷での茶番を演じて、M・ロークが脱走をはかるまでは、 スピーディで、一家にたてこもってからはしっかリとした室内劇で 緊張感を高めていくあたリは手慣れていて、まだまだM・チミノはなんといわれようと健在のようだ。

『ドラッグストア・カーボーイ』ではかっこいい女だったケリー・リンチはここでは、情けない女。 クールビューティーの久しぶリの登場にワクワクしているとこれがとんでもなく 弁議士とは思えない情けなさで、最後まで恋路をまっとうするかと思えば、 あっけなく警察の保護下にはいって一時は生死を共にしようとした男(M・ローク)を売ってしまう始末。

一方のローク等強盗に入られた家の奥さんの気丈なこと。 単純に2人の女性の比較をしながら観るのも一考。

とはいってもどうしても注目が集まるのはローク扮するマイケルという凶悪犯罪者。 賢明で、一見紳士的、そして冷静。 しかし、内面は非常に情熱的で一途に女を待つ男である。 刑事よりもなによりもやはり彼には犯罪者が似合う。 その上に愛を待ち続ける純な面が加わった。 この作品での彼と未公開の『レイプ&マリッジ』を観ると、 愛情にすがる男の純粋さとそれに裏切られた男の情けなさを垣間見ることができそうだ。 ミッキー・ロークは好むと好まざるの落差がかなり大きい俳優のようだが、 お茶の間のアイドルになろうとやはり、今を代表する危険な香をたたえた、セクシーで、 陰の魅力のある稀有な俳優なのだろう。 チミノ監督が惚れ込んだ才能、冷たい氷から一気に火が燃え立つような、 冷静で紳士的なな犯罪者が豹変して恐ろしい形相で暴力をふるう演技は 彼ならではの凄味がそなわっていた。

(Y)
(マイケル・チミノ監督作品)



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