前回お休みさせていただいたこのコーナですが、今号から復活。 原稿の送付先 地畑寧子 『飛虎精英之人間有情』記…R. 石川
香港警察の特殊部隊、飛虎隊に所属する阿弟(張學友)は、クラブマネージャーの父親 (呉孟達)と二人暮らし。だが、昔、警察官だった父の横暴な態度が原因で、 阿弟の兄が死んだことから、父子の関係はぎくしゃくしていた。 ある日ある事件がきっかけで、阿弟は、ハイディ(鄭秀文)という少女に出会い、 二人は恋に落ちる。が、ハイディの父(秦沛)は、黒社会のボス。警察官である阿弟と 娘の仲を許すはずはなかった。思い悩んだ二人は、駈け落ちするが、 ハイディの父の部下に襲われ、息子を助けようとした阿弟の父が命を落としてしまう。 怒りに燃える阿弟はすべてを捨てて復讐を決意するのだった…。 香港映画によくある父子もので、父と子の対立や情愛を描いた作品ですが、 出演俳優たちの好演とシンプルで丁寧な演出で、リアリティのある味わい深い佳作に なっています。映像もよく、特に雨の中の張學友と鄭秀文のキスシーンは、 ドラマチックで美しく、バックに流れるもの悲しい挿入歌(曲名、歌手とも不明) とぴったりで、悲劇の予感に満ちていて、お気に入りのシーンです。 主演の學友はいつも通りの好演で、主人公の父親に対する屈折した複雑な気持ちを 上手く表現しています。學友迷の私としては、彼の出演作や演技には、ついつい 点が甘くなってしまいがちですが、少なくとも、彼のあの普通っぽさと自然な演技が 作品にリアリティを与えていることだけは、確かだと思います。ラストで主人公は、 命懸けで復讐を果たしますが、もっとほかに方法がなかったのかとやりきれない気持ちに させられるのも、彼ならでは、だと思うのは私だけでしょうか。 主人公の父親をこれまた好演するのは、おなじみ呉孟達。息子への想いを 素直に表現することの出来ない不器用な父親役が、とてもはまっていて泣かせてくれます。 周星馳とのコメディ演技もいいけれど、こういう重い演技も上手いところが、 名バイプレイヤーたるゆえんなのでしょう。 主人公の恋人役の鄭秀文。彼女の演じるヒロインがとても個性があって魅力的です。 歌手である彼女は派手なイメージがありますが、この作品での彼女は、 一種のツッパリ娘でありながら、思いやりのある自分の気持ちに正直で大胆なヒロインを とてもチャーミングに演じていて新鮮です、學友との息もぴったりで、 駈け落ちしたふたりが教会で他人の結婚式に忍び込み、誓いをたてるシーンなど、 ありがちパターンなのに、感動的で切なくなります。 もうひとり呉孟達の恋人(!!)を演じる呉家麗。出番は少ないけれど、存在感があって 芯の強い大人の女性の色っぽさを持つ彼女は、『アンディ・ラウのスター伝説』 以来、私のお気に入りの女優の一人です。 憎まれ役、鄭秀文の父親には、おなじみ秦沛。『つきせぬ想い』などの いい人演技よりこちらの悪役の方がやっぱりはまっていていいと思います。 この作品は「香港電影城2」(冬門稔弐ほか著/小学館)でも紹介されているので、 ご存じの方も多いと思いますが、見応え十分の作品なので、ぜひ多くの方に 観ていただきたいと思います。 『真的愛[女尓]』記…R. 石川
青年実業家、林(張學友)は、ある日デパートの化粧品売場の店員、エンジェル (張曼玉)と知り合う。以前から林に憧れていたエンジェルは、積極的に彼に アプローチするが、失恋したばかりで恋愛に臆病になっている林は、今一つ 新しい恋に踏み込めないでいる。だが、ふたりの友人スティーブン(呉孟達)、 ポーラ(呉君如)とダブルデートを続けるうち、林は今まで彼の周囲にいた お金目当ての女性たちとは違うエンジェルに魅かれていき、ある夜とうとう ふたりは結ばれる。幸せを感じるふたり。 だが、そんなふたりの前に林の昔の恋人ジョセフィーヌが現われる。 林に未練たっぷりの彼女と林の仲を誤解したエンジェルは、林のプロポーズを 断ってしまう。別れたあとも彼女を忘れられない林は、再びエンジェルに愛を告白。 今度は彼女も素直に彼のプロポーズを受け入れるのだった。 ストーリーを読んでおわかりのように、ごくありふれたシンデレラ・ラブストーリーで、 一部では、香港版『プリティ・ウーマン』ともいわれています。 この手の映画はキャスティングが決め手ですが、演技派ふたりの顔合わせで楽しめ る作品になっています。大輪の花のようなマギーの美しさ、可愛らしさ、 溌剌とした演技はもちろんのこと、対する學友の上品で洗練されたダンディぶりは、 これまでの三枚目のイメージとは全く違う魅力を発揮して、驚かせてくれます。 スーツ姿もバッチリきまっていて、學友迷には必見の作品です。 ふたりの脇を固めるのは、おなじみ呉孟達&呉君如。あいかわらず息もぴったりで 笑わせてくれます。 映像も美しく小道具もおしゃれ。大作ではないけれど観おわった後幸せな気分に 浸れるハッピー・ムービーなので、ぜひご覧になってみて下さい。 |