女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
[シネマジャーナル]
37号 (1996.06)  pp. 64 -- 65

続・目指せ、千石規子

今回は「極道の妻たちの人々」のハナシ

K. 山本

 まだまだ修業が足りません。
 あまりにうるさい子供を親が放っているので注意すると、帰りに 思いっ切りイヤミを言われたりして頭に血が昇ってしまいます。
 お説教のひとつもしたい気分山々になったりしますが、説教するには いくら私でもまだ若い。
 瓢々と受け流すか、注意されても仕方ないと思ってもらえる位の どっしりとした存在感が欲しいものです。
 田島先生じゃないけど、私よりずっと若いバイトの子でも男子なら何も言わない、 でも女と見ると文句言い放題というのも身にしみて口惜しい。
 そんなこんな合わせて、まだまだ千石さんは遠いなと思う事しきりです。
 さて、“首領(ドン)を殺(と)った男”を最後に、極道路線もうやーめたと 言ってた東映ですが、“極道の妻たち”は別みたい、やっぱり。
 最後のナントカと言うので終わったかと思いきや、これでしか客は見込めないとばかりに 又々々・・極妻登場!
 私は3作目位で観るのやめたけど、十朱幸代・三田佳子を経て、やはり 岩下志麻姉は健在のようです。
“極道の妻たち 危険な賭け(静香付き)”の公開を間近かに控えて (シネジャが出る頃は公開されてる)、今回は“私の出会った極妻客あれこれ” をお話しようと思います。
 前回書いた、どちらの映画を何枚?と言う基本は置いといて、気を使う事多々あり。 というおハナシ。
“極道の妻たち〈ごくどうのおんなたち〉”とキチンと仰る方はもうほとんど居ません。 一般的に“ごくつま”“ごくさい”の短縮形で通っていますから。
 ダブル複数形にしてしまう人が多いのですが、大筋をハズした〔作り〕 をしてしまう人が居ないのは不思議です。“極道たちの妻たち”〜 “女たちの極道”どまり。それだけよく知られてるって事か。“志麻ね〜さんのヤツ” でもOKです。
 ただ、もう馴れてはきたけど前述のように、この映画独特の気使いと キンチョーと言うのがあるのです。
 ほとんどの人がどの映画を観るか言わないってのは前回書きましたが、 例えぱアニメを洋画とか、洋画と邦画とか、そうでなくても大体どっちを観るか 見当つく場合は『○○の方ですか?」と聞くのですが、“極道の妻たち”の場合は 例えそうだなと推測出来ても相手が言う迄辛抱強く待たねばなりません。
 又、“マディソン郡の橋”なら「マディソン郡ですねー」、 “カットスロート・アイランド”なら「カットスロートですね」で事足りるけど、 「極道ですね」はやはりちとマズい。
 何故なら以前、「極道の方(ほう)ですね」(一応“方”をつけたにも関わらず) と私が聞いたら、「ね〜ちゃん、ナンでワシが極道じゃゆーてわかった? 見たらわかるかー」と言われたからです。笑いながら仰ったのですが 私はすっかりビクつきまくり!!それ以来気をつけるようにしています。 「どちらの映画ですか?」に対して「えーとの、あれよあれ」とか言ってる程々の頃合いに 「あっ極道の妻たちの方ですか」とわかる(わかったフリをする)のがベストのようです。 (えーとのと言いながら極妻ポスターの方へ走る目線を捕えて私は気付いたのです! と言う演技も多少必要)
 一度、「東映の方(ほう)ですか?」を試したのだけど、「東映ゆーカオしとるか!?」 と言われ、いえ、あの・・もう片方のはキネ旬○位ものですし・・どう想像しても 極妻としか・・などと言えるワケもなく、あーどー言おーとめまぐるしく言葉が ゆきかう私に「あっ、もーいっこのは子供のか」と全然カン違いの納得をして 去ってくれた時もドキドキでした。
 そして、これは“首領を殺った男”の時の事ですが、「首領を〜の方ですか」と言うと、 「イェース!まぁわしらぁートられた方じゃがのー」と笑って返され、 どートられたんじゃー!どーゆーイミじゃー!?と今田風に心で叫びつつ笑うカオが ひきつってしまった事もありました。ひゃー


 広島ですもの、“極道の妻たち”などそのテのものを上映すると、 そのスジの方と言われる方もいらっしゃるのは当然。(別に広島じゃなくても) 時々ドキついたりはするけれど、でもほとんどはアニメで目にする若い母や 場所柄をわきまえないメーワクカップル等より余程ものの道理がわかっているぜ! という感じです。一般的に声が大きいので音量にビビってしまうのもあるかも。
 バイトの子に聞いたんだけど、夜にいかにもコワそうな大柄な男性がドカドカ 入って来て、「チケットお願いします」と言うと「ん・あー連れが持っとる」 とアゴで示し声もドスがきいていたそうですが、後ろから女性が「まーくん待ってエ」 と走って来たので、ああこの人も彼女にはカワイイ呼び方されてんだーと 笑いをコラえたという話もありました。
 映画館って体調良くて、精神状態も安定してて、ワケのわからんヤツさえ居なければ (スゴい都合良過ぎ!)、それなりに様々な人種の良いウォッチングになるとは 常々思っていますが、やはり仕事・やはり人間・やはり感情、そう巧くはいかないし、 ナンだかトンでもない人って案外たくさん居るもんですよね。
 でも、さっきも書いたけど、“極道の〜”系の上映はキンチョーするし 肩もコリがちだけど、無理難題言われたとか非常に納得のいかない文句を 言われたというのは記憧にない。(同僚の女性に聞いても同じ答え)
「ワシ、ホンモノ!」を連呼して入ってったおじさんが、今日来とるお仲間に配るんじゃと アイスを大量に買い込み、余った分を「ねーちゃんやる」とくれたのも懐しい。
 ただひとつ、とてもイヤだなと思うのは、極道系上映の期間は場内のタバコのカスが 膨大に増えると言う事です。



 市内に本家東映もとっくに復活したので、今回うちにはそんなに人来ないと思うと 随分ホッとするけど、そうなると又ホンのちょっぴりだけ甲斐のなさ (何の?と自分でつっこんでおく)も感じる今日此の頃です。



P・S 今年の香港エンターテイメント映画祭が決まりました! 6月15日から例年通りシネツインで、“ターゲット・ブルー” “南京の基督”“0061 北京より愛をこめて” “天與地”“赤い薔薇 白い習薇”の5本が観られます! 楽しみ!!




(イラスト:N. 岸井)
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