『激流』 『ミルク・マネー』 『男たちの挽歌4』 『ウィンズ・オブ・ゴッド』 『マークスの山』 『プレタ・ポルテ』 『愛よりも非情』 |
このコーナーでは、配給会社が眉にツバつけて(?)売ろうとがんばった(ている)映画を その映画のキャッチコピー(茶色表示)もつけて わたしたちが独断と偏見でチェックします。 思わず涙してしまう感動ものあり、頭にくる映画あり、どうにかしてくれ〜としか いえない映画あり。 あなたのチェック度はいかがですか? ご意見・参加をお待ちしています!!!!! |
メラニー・グリフィスってどうしてこんなに気のいい娼帰役が似合うんだろうって 思わずにいられないこの映画。彼女特有の舌足らずの口調といい、母性もたっぷり 秘めた優しさが満開で、まさに彼女のための作品。彼女の個性は、別に カマトトぶっているわけでもなく、ある意味ではマリリン・モンローにも似ている気もする。 彼女がひょんなことから遭遇する二人はちょっと性に興味を持ちはじめる父思いの少年と、 生物の教師という職に生きがいを感じ、息子を愛する父親。 少年は彼女を母親のように慕い、父親は彼女と恋に落ちる。 ラスト、娼婦を廃めて自立していく彼女と少年の父親が愛情を感じながらも、 結ばれないのもなかなかニクイ落ちでマル。 父子が互いを思い合う関係も、押しつけがましくなく、ホノボノとさせられてしまう。 父親を潰じるエド・ハリスは『アビス』など、明晰な科学者やキレものの刑事役で 有名だけれど、こんな朴訥な普通のおじさん役も自然で、彼が演技派俳優といわれるのも 納得できる。 古典的とはいえ、田舎町の偏見をコメディタッチに、ロー・ティーンエイジャーの 男の子の性への目覚めと家族の絆をさわやかに描き込んだこの作品は、 かなり拾いものの一作。 (Y) |
内容が黒社会ものというだけで、『男たちの挽歌(英雄本色)』 になぞって、またいいかげんな邦題がつけられちゃったのかな、っと思っていたら、 原題も『新英雄本色』で、作品の本意にそった邦題だったので、まず安心。 さて、内容といえばこれがけっこう面白い作品。大もとの 『男たちの挽歌』ほどスカっとはしないけれど(おまけにだれも幸せになれない)、 過去量産された黒社会ものと感触を異にするために、かなり工夫してある展開なので、 見応えはあります。組織の頂点にいる男たちが、裏切りから一気に奈落の底に落とされ、 反撃に立ち上がるといった復讐劇は通例通りだし、主演の鄭伊健(チェン・イーキン)、 劉青雲(ラウ・チンワン)は、それぞれかつての狄龍と周潤發をなぞらえたような キャラクターを好演していて、グッド。特に劉青雲は、周潤發にも似たノホホンとした コメディ演技が冴えていて、さすが鄭伊健のクールなキャラクターと劉青雲の 笑いと涙をさそう人情あふれるキャラクターの取り合せはよく噛み合っていました。 でも、どうしてポスターにはこの二人に加えて王敏徳(マイケル・ウォン) が載っていたのでしょう。実際彼の出番は少ないし、ぱっとしない優柔不断の役柄で、 この作品の疑問といえば彼の役回り。彼の演じるキャラクターさえしっかりしていれば、 もっと楽しめたのに。 それに比ぺて大健闘だったのが、紅一点の邱淑貞(チンミー・ヤウ)。 ポスターに三人を載せるなら彼女の方が妥当なところ。 アクションシーンもしっかりこなしていたし、前半の輝いていた美貌を後半は 見事に隠しての熱演ぶり。 それにしても、この作品なんでみんなで身体障害者になってしまうんでしょう。 鄭伊健に至っては、手の指はなくなるわ、ふってわいたように癌になってしまうわで 気の毒すぎます。とはいえ、当の鄭伊健っていう俳優さん、 日本でも徐々に人気が出てきているようで、私が観にいったときにも、 彼のファンらしき女性がチラホラと。容貌もなるほど日本人が好みそうなタイプ。 私個人としては、福山雅治似だと思うのですが、いかがなものでしょう。 (Y) |
反戦をうたいながら、第二次世界大戦終戦間近の青者群像にせまるねらいは、 わかります。平和ボケした平成の若者のタイムスリップという導入も、 今の若者に親近感をもたせる意味で効果的だとは思います。 兵士たちの上下関係が比較的緩やかで一瞬疑問に思っても海軍出身の人たちから 構成されているからだというフォローや、海兵出身の兵士と学徒出陣で 戦地に赴いた兵士との意見の対立などは、きちんとフォローされていたと思います。 だから、この作品の元ネタである舞台が、ヒットしたのもなんとなく わかるような気もします。 でも、映画としてみると、映画らしい観せどころが、あまりに少なすぎて欲求不満。 特に随所に挿入される当時の特攻隊の戦闘機のフィルムは何度も出す必要が あったのかなと疑間。内容的にも屋外ロケにすぺきところがたくさんあるのに、 屋内で撮っているところが多くて、いかにも舞台からの転用っていう感じが してしまいます。要はストーリーに加担せず、舞台と映画は別個のものだという観点で 製作してほしかったと思うわけです。例をだせば、前号で紹介した『我和春天有個約會』。 この作品も舞台でヒットした作品ですが、この作品を映画化する際には、舞台では 監督をしている人を脚本担当にして、監督には映画をよく知っている映画監督に 任せていました。それでこそ舞台・映画双方で大ヒットを放ち、相乗効果が 求められるというもの。 『ウィンズ・オブ・ゴッド』は、少々大仰な演技もあったけれど、 役者陣の力演が目立っていただけあって、映画という点で物足りなくて、 残念でなりません。それにチラシにある 「映画は感動! 感動するからこそ映画!」のキャッチコピーが 押しつけがましくて、逆に感動が半減しそう。配給元の意気込みはかうけれど、 これじゃいい過ぎです。 (Y) |
ひょっとして当初はこんなキャッチ・コピーを考えながら製作していたのでは ないでしょうか? 『砂の器』『事件』に続く文芸推理大作、とかなんとかって。 この作品、ダイジェスト映画にならないようにと考えたせいなのか、 説明をかなり省いてしまったようで、私のような原作を読んでいない者には わかり難い事が幾つかありましたが、そのおかげで面白く観ることができた気もします。 説明不足でほおって置かれたエピソードを、拙い推理力で補いながら観る、 つまり素人探偵になりきっていたのです。いつしか夢中でストーリーを追っていた、 なんて久々の事でした。映画と原作は別物として捉えるべきだとは思いますが、 この作品に関しては原作をお読みの方に、ぜひとも感想を教えていただきたいと思います。 タイトルにもある〈マークス〉とは何か?この謎が意外と早くわかったので、 私はすんなり話に溶けこめたのですが、結のないエピソードの一つ一つで ひっかかってしまった人は???のよう。それでも最後まで飽きずに観られるのは、 このところ世間を騒がせている映画的事件を思わせるもの があるからかもしれません(『アウト・プレイク』が面白かったのも 同様の理由からでしよう)。 と、推理劇なのでストーリーに触れずに書いていくのは難しく、 ヘンな文になってしまいました。最後にキャストについてちょっと一言。 中井貴一の熱演ぶりは買うけれど、若々しすぎるのが残念でした。 彼の実年令に合わせて、他の刑事役者を集めてくれれぱ良かったのにと思います。 エリートなのかもしれないげれど、周りの刑事仲間達が年上ばかりというのはねえ。 ともあれ、今年は充実している邦画界の中でも、見応えのある作品の一つと言えるでしょう。 (D) |
ロバート.アルトマン監督にしてはエンターテインメントに撤しているこの作品、 それゆえマニアや批評家には物足りないとか。けれど、誰が見てもわかり安く 楽しい出来上がりになっているのは確かだと思います。 オール・スター・キャストやスーパー・モデル達を楽しむのもいいし、 パリコレの衣裳にため息をつくのもよし。その上、映画ファン的お楽しみがいっぱいで、 私は「あっ、このシーンどこかで」などと思い始めたら最後、この人達の関係は? などと楽屋オチ的関係を考えながら観るハメになってしまいました。たとえば メイン・キャストが宿泊するホテルの名前はル・グラン。つまりグランド・ホテル形式 (一つの場所を舞台に繰り広げる群像劇。グレタ・ガルボ主演の映画が元) をハナからおちょくっているんですね。ソフィア・ローレン& マルチェロ・マストロヤンニにアヌーク・エーメが絡むとか、 共にパトリス・ルコント監督作品の主人公を務めたジャン・ロシュフォールと ミシェル・ブランがコンビを組むとか。サリー・ケラーマンがトップレス・シーンで とったポーズが『M★A★S★H』のシャワー・シーンと全く同じ、 などなどの映画的パロディ。 『ザ・プレイヤー』で知合ったのが縁で結婚したジュリア・ロバーツと ライル・ラヴェットはこの作品完成後離婚したし、マストロヤンニは娘と、 ローレン・バコールは息子と初共演。といった芸能ネタとか。 観たあとで映画界物知り度チェックをしたくなったのは私だけではないでしょう。 そういえば、スーパー・モデル達のヘア・ヌード・シーンばかりが 話題になっていましたが、彼女達のボディの美しさはあまりにも芸術的で ヒワイな感じは全く無く、臨月ヌードのウテ・レンパー(彼女の本業は歌手だけど) には神々しさまで感じます。既製服をカッコ良く着こなすには、 まず自分の体を作らなくてはならないし、完璧な肉体はどんなゴージャスなドレスよりも 美しいのですね。そんな意味でも人工的肉体美のソフィア・ローレン (とても還暦とは思えない肌のハリ、豊かなバスト)と、ナチュラル・ビユーティ (だと思うのだけど。シワの一つ一つまでが美しい)のアヌーク・エーメを 対極に据えるとはさすがです。映画のテーマとは関係なさそうですが、 美しく老いることについて、考えさせられました。 (D) |
覚えていますか『カルメン』を? 情熱的でカラフルで、アントニオ・ガデスによる スタイリツシュなフラメンコに魅了され、しばらくスペイン熱に浮かされましたっけ。 80年代前半は、スペイン映画といったらカルロス・サウラ監督のこの映画のことでし た。 久々のサウラ監督作品は、ファム・ファタール(宿命の女)物とでもいいましょうか。 幸福の絶頂にあったヒロインがレイプされ、犯人への後讐に立ち上がり、 連続殺人へとはしるというすさまじい話です。これが同じスペイン映画監督の ペドロ・アルモドヴァルの手にかかっていたなら、エロチックでブラック・ユーモア 満載だったでしょうが、この映画はひたすら悲劇的。ヒロイン・アンナの心の動きを 空にたとえていて、彼女の悲しい人生を思いやらずにいられません。 アンナが恋に落ちることを暗示させるファースト・シーンの空撮。町は夕焼けの 薔薇色に染まっています。あまりにも暴力的なレイプ・シーンはどしゃぶり。 後半はどんよりと曇っていて、ラストまで決して晴れることはありません。 ヒロインのただ一人の理解者とも言える恋人役は、ハリウッドヘ渡ってすっかり 油抜きしてしまった感のあるアントニオ・パンデラス。かつてのギラギラした ヘンタイ・ニイチャンぶりは鳴りをひそめてしまいましたが、 優しく包容力があって好感が持てます。ハリウッドヘ行って良かった外国人俳優の 珍しい例でしょう。 (D) |