女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
[シネマジャーナル]
29号 (May 1994)   pp. 69 -- 72
今さらながら

気になるあの人

トゥルー・ロマンス』ヒット祝い

クリスチャン・スレーター

推薦者…播磨屋お弓

推薦の言葉

忘れもしない、あれは90年の秋。梅田で半ば新幹線の時間までの暇つぶしで観たのが 『ヤングガン2』。 本当はエミリオ・エステベス監督第二作の『メン・アット・ワーク』 に目星をつけていたのだが、映画館まで行ったら客が入らないらしく終わっていた。 仕方ないので、近くの劇場でやはりエステベスの出ている 『ヤングガン2』をやっていたので、『1』を観ていなかったけど、 森繁の『流転の海』よりかはいいやと思って中へ入ったのだった。

ところが、お目当てのエステベスは『ウィズダム』の頃の精悍さはどこへやら、 太っていて全然かっこよくない! 彼以外(キーファー・サザーランドも ルー・ダイヤモンド・フィリップスも)はかっこいいのに、どうして!?  中でも私が目を奪われたのは、エステベスのビリー・ザ・キッドに対抗意識を燃やす、 アーカンソー・ルタボゥ役のクリスチャン・スレーターであった。

彼のことは『薔薇の名前』を観て知っていた。永千絵さん曰く、 「ショーン・コネリー以外は作り物のような顔をした人物ばかり」の、 おどろおどろしい中世のミステリーの中で、スレーター少年は 負けずにアクの強い顔で目立っていた。当時の私は 「もっと可愛い子使えばいいのに」と思っていた。

そのスレーター少年が、90年には不敵な笑いを浮かべて半悪役として スクリーンに登場したのだ。私の目は彼に釘付け。こんなことは 『背信の日々』のトム・ベレンジャーに となって以来だぞ、 これはえらいこっちゃ!と思ったのだった。 映画自体にはそれほどノレなかったんだけど (だってエミリオがあまりにもデブなんだもの)、 不敵なスレーターと出会えた忘れられない関西旅行の思い出です。


プロフィール

1969年8月18日ニューヨーク生まれ
父は舞台俳優マイケル・ホーキンス、母はキャスティング・ディレクターの メアリー・ジョー・スレーター。
身長174センチ。
好きな俳優は、ジャック・ニコルソン、ジェームス・ディーン、 アンソニー・クイン、そしてハーヴェイ・カイテル (ここは私と同じ好み!?さすがお目が高い)。
演技力は高く評価され、《ヤング・ジャック・ニコルソン》と称されている。
91年『モブスターズ』の宣伝のため、東京国際映画祭に来日。


フィルモグラフィー

☆ビリー・ジーンの伝説(85/マシュー・ロビンス監督/日本未公開)
☆薔薇の名前(86/ジャン・ジャック・アノー監督)
☆タッカー(88/フランシス・フォード・コッポラ監督)
☆ローリング・キッズ(88/グレーム・クリフォード監督)
☆ヘザース/ベロニカの熱い日(88/マイケル・レーマン監督)
☆宇宙への選択(88/デイヴィッド・サパースタイン監督)
☆ザ・ウィザード(89/トッド・ホランド監督/日本未公開)
☆今夜はトーク・ハード(90/アラン・モイル監督)
☆フロム・ザ・ダークサイド(90/ジョン・ハリソン監督)
☆ヤングガン2(90/ジョフ・マーフィー監督)
☆ロビン・フッド(91/ケビン・レイノルズ監督)
☆モブスターズ/青春の群像(91/マイケル・カーベルニコフ監督)
☆カフス!(92/ブルース・A・エバンス監督)
☆ハートブレイク・タウン(92/マーク・ロッコ監督)
☆忘れられない人(93/トニー・ビル監督)
☆トゥルー・ロマンス(93/トニー・スコット監督)

参考資料
「デラックスカラーシネアルバム48/キアヌのように」(芳賀書店)
* これはキアヌ・リーブス、ジョニー・デップとの3人組の写真集。

推薦者への質問

演技力はあると思う?

--あるある。それだけでなく彼の魅力は不敵な存在感!



作品の寸評をどうぞ。


『薔薇の名前』

作品としては、これが誰にも誇れる一級品。ティーンで、しかも 決してハンサムとはいえない彼が、貧しい村の娘に襲われてしまうのにびっくりした。


『タッカー』

タッカーの自動車作りを手伝う健気な長男。信じられないくらい素直で地味なキャラクター。 『薔薇の名前』の個性的な風貌は鳴りを潜めて普通の少年(子役)という感じ。 ずっと後になってビデオで観たが、この変わりようには舌を巻いてしまった。


『ヘザース/ベロニカの熱い日』

私の好きなウィノナ・ライダー(オスカー取れなくて残念!!)との共演。 喜び勇んで観に行ったが、予想以上のブラックな展開に戸惑う。 彼の役名はJ・D。このイニシャルはジェームス・ディーンと J・D・サリンジャーを連想させる孤独なアメリカン・ヒーローか?


『宇宙への選択』

ヘザース』と同じ年に、こちらは爽やかな青春物。 引退した宇宙飛行士(マーチン・シーン)との心の交流の物語。 なんとクリスチャンの離婚した父親の新しいパートナーの役で、 あのシャロン・ストーンが出ている。ぎくしゃくした父と子の間を うまく取りもってあげる良き理解者のお姉様というキャラクター!


『今夜はトーク・ハード』

昼間は無口な高校生。夜は海賊放送の過激なDJ。 夜の姿がもちろん彼の本領なのだが、昼間のメガネをかけて図書館に通う 地味な高校生姿もなりきっていて忘れ難し。相手役はサマンサ・マティス。 『ディス・イズ・マイライフ』で有名になった彼女だが、 私はすでにこの作品で青田買いしていました。


『ヤングガン2』

あの憎らしさ、上手い!!!


『ロビン・フッド』

これもまた大好きなケビン・コスナーとの共演で、私が大喜びして 映画館へ駆けつけたのは言うまでもありません。


『モブスターズ/青春の群像』

東京国際映画祭の舞台挨拶を観に行ってしまった。高校生がキャーキャー言っていて、 いつの間にメジャーになったのかとびっくり。共演の3人も一緒で、 挨拶が一人一言ずつでがっかり。映画のほうもアイドル映画でがっかり。 あのララ・フリン・ボイルが相手役だったが、『TP』のドナちゃんのお色気はどこへやら、 なんだか老けた人だなと思って観ていた。


『力フス!』

軽い!!高校生のデート映画って感じ。


『ハートブレイク・タウン』

お母さんがキャスティングしているので助っ人に出たのか?(ノークレジット) 浮浪者の少年少女の取り調べ官(?)という意外な役柄。 出番はほんの1, 2分。出演者は豪華(ララちゃん、カイル・マクラクラン、 レイチェル・ティコティン、ローラ・サン・ジャコモ)だが、 ちょっと実験映画っぽい、クセのある作品。


『忘れられない人』

男運の悪いウェイトレス(マリサ・トメイ)を密かに見つめる無口な同僚。 こうしてみると結構無口な役やってるじゃないか! この役で、 高校生だけでなくOLのお姉さんにもファン層を広げたのではないだろうか? (私が観た日、銀座のシネパトスでは立ち見が出た)


『トゥルー・ロマンス』

これは彼の主演での代表作といえるだろう。この役も 始めはおとなしめのニンジャ映画おたくの青年。それが新米コールガールと恋に落ち、 銃を手にした途端に大変貌。自分がヒーローになってしまう。 デニス・ホッパー、ゲイリー・オールドマンという一級品のクセモノ共演者に対し、 一歩も引かなかったのはお見事。

好きな作品は?

作品の完成度でいうと『薔薇の名前』『ロビン・フッド』 (あっ、これはケビンの作品としてかな?)『トゥルー・ロマンス』。

クリスチャン個人としては、『ヤングガン2』『今夜はトーク・ハード』 『宇宙への選択』『トゥルー・ロマンス』。

最後に言いたいことは?

いろいろ恋の噂があるようだが、映画雑誌に載ってるプレミアやパーティーのスナップ写真には いつも一人で写っている。なぜ??

トゥルー・ロマンス』で一気に花を咲かせた感じ(男優にこの表現は変か?)で、 長年のファンとして非常に嬉しい。いい作品にたくさん出会って、 ハーヴェイ・カイテルのようにかっこよく年をとってほしい。

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