『靴をなくした天使』 『山猫は眠らない』 『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』 『レザボアドックス』 『沈黙の戦艦』 『ワン・カップ・オブ・コーヒー』 『ロボコップ3』 |
このコーナーでは、配給会社が眉にツバつけて(?)売ろうとがんばった(ている)映画を その映画のキャッチコピー(茶色表示)もつけて わたしたちが独断と偏見でチェックします。 思わず涙してしまう感動ものあり、頭にくる映画あり、どうにかしてくれ〜としか いえない映画あり。 あなたのチェック度はいかがですか? ご意見・参加をお待ちしています!!!!! |
派手派手の『沈黙の戦艦』を観た直後に観たので、 よけいにこの作品の静謐さが深く心に突きささった。 背景には銃声と密林、登場人物は極めて少なくほとんどがトム・ベレンジャー (ベケット)とビリー・ゼイン(ミラー)のふたりだけで展開していく。 政府の命をうけ同じ標的を狙うふたリのスナイパー。 一発必中を旨とし、殺しに対して乾いた感情しか持たない彼らを観ていると、やれ復讐だ、 報復だと血気さかんな町の殺し屋の姿が全くアホらしくなってくるから不思議だ。 それでも、ベケットはすっかり様変わリしているであろう故郷への帰還に心をつないでいる。 密林の地の利を心得、恐怖など通りこして殺しという非日常的な行為が すでに彼の生そのものになっている寡黙な彼の一言だからこそ心を打つ。 一方、腕はたしかだが、エリート意識が抜けないミラーは、 本国の指令どおりに行動しないベケットに反感をもつ。 同じ標的を追いながらも葛藤を続けるふたリの感情は危うく観ているものまで不安にさせる。 ミラーは思いあまってベケットに銃を向けるが、 スコープを覗く彼の目には標的にねらいを定めているベケットの真剣な横顔が映リ、 彼は思わず「美しい」とつぶやく。この何とも形容しがたい 同志的なミラーの思いはなんともせつない。 ミラー役のビリー・ゼインは、『ツイン・ピークス』 でまるでつけたしのように後半に現れるかっこいい青年実業家で知っていたが、 そういえば、ニコール・キッドマンの『デッド・カーム』で観たことを思い出した。 彼女の夫役のサム・ニールと相反してどこか『太陽がいっぱい』 でのアラン・ドロンを思わせる、野性的で狂暴なハンサム・ガイだったと記憶している。 ついでだが、この『デッド・カーム』もたいへん面白い作品なのでオススメ。 トム・ベレンジャーには不思議と銃が似合う。 たぶん『プラトーン』での強烈な印象がいまだに抜け切れていないためかもしれない。 彼はラブ・ロマンスものから軽妙なコメディまでそつなくこなす演技派ではあるが、 なんといってもこのベケットほど感動できた彼はいない。 わずかな光しか届かない暗い密林をバックにややもすると単調になリがちな物語を これほど緊張感で埋め尽くしたこの作品の監督の手腕にはひたすら脱帽。 ラストふたりが帰還していく姿に一瞬安堵の思いはよぎるが、 ふたりのこれからを思えば決して爽快な笑いは得られない。 かえって派手な銃撃戦を観てスカっとしたいよりは、 高度なドラマ性を望む人に、ぴったリの逸品だ。 (Y) |
連休に早起きして9:20の回に観に行ったのに、ガラガラで拍子抜け。 早起きのせいで前半眠ってしまうし。 アル・パチーノが盲目の役を熟演したという以外、 特にこれといって作品の魅力はないように思った。 高級ホテル、レストラン、一流のコールガール、フェラーリ…。 主人公の欲求が俗物すぎる。盲目になって姪の世話を受けるようになってからは、 軍人の年金はあっても物理的に手に届かないものだから、 よけいに憧れてしまうのだろうが。 映像でそれらを見せられて酔ってしまう観客も単純すぎる。 クライマックスがアルバイトの世話係に高校生の窮地を救うためのパチーノの演説で、 『ア・フュー・グッドメン』といい、アメリカ映画は演説がお好き、という感じ。 この作品を観て女性の描き方に不満を持つ女性が多いと思われる。 コールガールや高級レストランに出入りするマドモワゼルばかりが 魅力的であるかのように描かれている。 あれでは気難しい主入公を引き取っている姪が気の毒だ。 ここが作品賞を取った『許されざる者』との差だと思う。 あちらは、保安官の裁決に不満を持って自力で犯人に賞金を懸ける売春婦たちの怒りや、 主人公を更正させた亡き妻の力を描写していたのに。 (雀) |
この作品の監督が以前ビデオ屋の店員だった(ビデオでーたに載っていた) ということを知って、現に自分も今ビデオ屋の店員だという変な親近感と、 黒服の男が集団で歩いてるポスターがかっこよかったという、 極めて不純な動機で観にいったわけだが、これが期待を大きく上回る面白さ。 そして映画が始まってしばらくしてもしかしてこれは…と思っていたら、 やっぱりあのキューブリックの『現金に体を張れ』にインスパイアされた作品だとわかり 感激もひとしお。というのも長年(?)の希望がかなって今年になってやっとその 『現金に体を張れ』を観ることができたからだ。 この作品はいうなれば宝石強盗団の失敗という惨めな話なのだが、 黒服の渋い男たちが朝食の代金を払いたくないばっかりにぐずぐずと不似合いな(?!) マドンナの歌のことで討論していて、 チップを払うの払わないとゴネるという妙なところで笑えるし、 強盗の場面そのものずばりは描かれていないにも関わらず、 エキサイテイングな要素が詰まっていて堪能できる。 (ただ、お腹を撃たれて多量の出血をしたり耳を切るシーンなんかがあるので、 極端に血に弱い人にはちょっと酷かも) そして、この男たちを演じる俳優全員が「気になるあの人」 に推薦したいほどの個性派ぞろいというのもいい。 中心になるハーヴェイ・カイテルは別格としてもどこかで観た顔のティム・ロス (この人の役どころは仲間に潜入した警官)やスティーヴ・ブシェーミ、 ますます太ってしまったクリストファー・ペン(ショーン・ペンの弟)。 そしてなんだかいつも狂暴な役ばっかりのマイケル・マドセン。 彼を最近どこかで観たなあ〜と思っていたら、あの『テルマ&ルイーズ』 でルイーズ(スーザン・サランドン)の恋人やってた人だったと気が付いた。 そういえばあの時もヤクザっぽい男だったけど、 なにもきかずお金を貸してくれるいい男だった。 この人名前をみればわかるけどあのバージニア・マドセンのお兄さんなんだそうな。 ちっとも似てないからわからなかった。妹はきれいなブロンドだし、色白で大きな瞳。 方や堅そうな黒い髪にハンサムだけどごつそうな顔立ち。 この兄妹の共通点といえばセクシーなところと足が長いということくらいかな。 (ジョーン&ジョン・キューザックとは大違いだ?!) とまあ、女性がちっとも登場しない(自動車を取られてしまう女性がほんのちょっと出るけど) 今時めずらしい(どんなアクションものでもだいたいひとりはかんでるのが普通なんだが) 作品なのだが、どこかの国のやくざ映画のように変なサービス精神を出して 女の裸を出すなんていう野暮なこともしないし、 とにかく鼻につかないハードボイルドなタッチに知らず知らずのうちにのせられてしまう。 彼らには本名もない。単なる色のコードネームでしかお互いを知り合わない。 そしてそのまま死んでいく。でも彼らの心はあくまで任侠の世界。 血塗れになったミスター・オレンジをミスター・ホワイトが必死に抱き続けるとこなんかまさにそう。 東映のやくざものが嫌いな自分がなんでこんなところに感動してしまうのか 不思議なのだが、哀しいかな(?)日本人である私には理由もなく納得できてしまう。 作りはスタイリッシュでいかにも洋画なんだけど、 内面は妙に日本的なところがある不思議な作品ではある。 もしかしてこの作品、本国よリ日本のほうが、うけるかもしれない。観なきゃ損です。 (Y) |
この作品のおかげで『ダイ・ハード3』の公開が遅れたというのは周知のことだけど、 はっきりいってこれを観たあと『〜3』を観るのが恐い。 どこかで比較してしまうだろうし、これより面白くなかったらと考えちゃうほど、 この作品しっかりできている。 今回はどの作品もホメているので単なるお調子者のようだけど、面白かったのは事実。 主役のスティーブン・セガールは、演技もうまくなったし、 この人のアクションはいうことはないし、トミー・リー・ジョーンズとゲイリー・ビジーは 頭の切れる悪役とアホな悪役というたいへんわかりやすいキャラクターで恐がらせてくれてるし…。 ということで人物設定はよい。それになによりも あのミズーリ号の内部が機械に弱い人間でもよくわかるように説明されているのがよい。 これがわからないとなんであんなにまでしてテロリストがこの戦艦をシージャックするのかわからないもの。 それに派手。爆発はボンボンやるし、閉じこめられたクルーは水浸し。 スカっとしたい人にはほんとに向いてる。 唯一気になったのは、テイトとかいうプレイメイトだかのちょっとおバカな女性。 縞麗な体を誇張するのはいいけれど、ちょっと前のハリウッド映画によくいた 男の後をチョコチョコ付いて回る“考えることは男に任せた型”のかわいい女なんだ彼女が。 招かれたはいいけれど、そこはすでに修羅場。 確かに驚くのは当然だけど、なんにも考えないで、セガールの後ろにくっついて、 キャーキャー悲鳴をあげてばかリ。さすがのセガールも 「男女同権なんだから、あんたも戦ってくれ」の一言。痛いこというなと思わず感心。 なるほど同権ならこの非常時に戦う義務もある。 それからの彼女の活躍はけっこういけるんだが、 これってさりげなく今を象徴していてドキっとした。 確かに同権の意識が社会に広まっていて頑張ってる女性は沢山いるけれど、 未だに守られることに期待をしてしまってる女性の心理ってあるんだよね。 けっこう重い立場にいながら、最終的な責任は男性におまかせしちゃうみたいな。 いうなれば「振リ向けば奴がいる」の松下由樹みたいな人。 そういえぱ、今年公開された『インター・セプター』という やっぱりテロリストにハイジャックされる作品があったけど、 こっちの紅一点はかっこよかった。 別に気張るわけでもなしやさしさもたくましさも兼ね備え、 部下の信頼も厚い輸送機の女性機長。 殴られようが、足を刺されようがとにかく冷静で明晰。 部下を守リぬく姿も健気じゃなくて、むしろ雄々しい感じだった。 高級将校の風格もあったしね。特に女性だからなんだという誇張もなかった分 とても好感が持てた。 この頃『エイリアン3』は別格としても『リーサル・ウエポン3』のレネ・ルッソにしろ、 『インター・セプター』のエリザベス・モーヘッドにしろ 男性優先のアクションものにも男性と互角の女性がよく登場するようになった。 彼女たちのキャラクターに共通するのは、優等生的な気負いもなく気さくであること。 紅一点というきどりもないので自然と仲間になってしまうこと。 だから男性側にも彼女たちに対して女性としてよリ 同僚としての意識が先に働くということ。これって現実の社会だとけっこう難しい。 反省する点はこちら側にもあるんだけど。 でも、その前に日本映画でこんなタフな女性像が入ってる作品を観てみたい。 (Y) |
タイトルをみるとなんのことか皆目見当がつかないけど、 これは一杯のコーヒーを飲む時間しかメジャーリーグに入られなかった、 つまりほんのちょっとだけしかメジヤーリーグ入りできなかった野球選手のことを指すそうだ。 うまい比喩だなと感心してしまった。この作品を観て、 以前NHKで放映した大リーガーのドキュメンタリーをみていたく感動したことを思い出した。 アメリカの職業野球のシステムはとてもきびしくメジャーリーグに入れるのはほんの一握リ。 それも入れ替えが激しい。メジャーの下にはマイナーリーグがあって、 その中も3A、2A、A、教育リーグと細分化されているらしく、 背中に名前をつけられるのはメジャーのみ。あとはしょっちゅう入れ替えや トレードがあるので背番号のみ。 メジャーは毎日自分専用のユニフォーム一式を洗濯してもらえるけど、 それ以下はまとめて洗濯したものを早いもの順でとる。 つまり遅れてくれば、穴のあいたストッキングでプレーしなきゃいけない。 それに、メジャーの報酬なら毎食豪華なステーキを食べられるけど、 下の方にいくとホットドックしか食べられない。 だから中には不動産屋なんかの副職をしている人もいるという。 取材をされていたその人は、ちょうどワン・カップ・オブ・コーヒーな人で、 常に移動しているので家もない。 一緒に移動している子供もホテルにしか住んだことがないと言っていた。 また、ある人は朝早くに電話で「今日からこなくていいから」といわれたとか、 さて着替えようと球場にきたら、「今日はもういい」といわれたとか、 笑い話にもならないきびしさなのだ。それでも、いつかは、もう一度、 とメジャーリーグをめざす。 この作品は、監督もデビュー作だし、中心を演じる俳優陣も顔を観なければ思いだせないほど、 あまリ日本ではネーム・バリューがない人ばかり。 そのためかひっそりと上映されていたが、一度観れば深く心に残る温かい小品だと思う。 今は一番下のリーグにいるが、ほんの少しメジャーにいたことのあるベテランピッチャーの 野球に対するこの上ない真撃な思い。血圧降下剤を多量に飲んで、 体がボロボロなのにメジャーヘの夢を捨てない純粋さ。 多大な可能性を秘めて入団してくる若い黒人投手。それに対してどうせ頑張っても… とくすぶっているチームメイトたち。 オーナーがホットドック売リまでしている小さな球場。 展開は予想がつくもののなぜか魅かれてしまう清冽な味わい。 たまにはこんな作品を観て心を洗ってみたい。 (Y) |
アメリカ映画だから、本国でどのくらいヒットしたのかなと捜してしまったが、 日本の方が公開が先だったんですねこの作品。 どうもこのメタリックな姿に馴染めないためか『ロボコップ』には並の感動しかできず、 『〜2』に至っては内容まで?だったので『〜3』もどうかなと心配していたのですが、 楽しめます。ただ、『ロケッティア』みたいに売りになっている「飛ぶ」 シーンがちょっと。合成がアリアリ。しかもこのシーンが長い。 この点を除けばストーリーもヒューマンに仕立ててるし、 スピード感もあってあっという間に観おわってしまいます。 そして、観ている時は夢中で気がつかなかったけど、ロボコップを除けば 善玉の中心にいるのはなぜか皆女性。 常連のルイス(ナンシー・アレン)はすぐ死んでしまうけれど、 なんともたくましい反乱軍のリーダーがあの『バグダッド・カフェ』 の女主人ブレンダをやっていたCCH・パウダーだし、 ロボコップのメンテナンスをするのも女性科学者、 そして危機を救うコンピューターの天才も女の子。 そして悪玉が、なぜか(?)日本人。(俳優は日系人)それもへんなところで妥協しちゃう。 彼のラストのお辞儀ってなんだったんでしょう。 そしてその部下のサイボーグが中国系。このブルース・ロックなる人ハンサムなんだけど、 あごをずらすなんていう苦労のわりに笑えない瞬間芸をやってくれる。 よくみると妙に気をつかった配役をしてあったんですね。この作品。 監督は『クリープス』というおタッキーなホラー映画を撮った人。 なぜおタッキーかといえば、この作品の舞台になるのがコーマン大学で、 活躍するのがロメロ君とフーバー君という学生。 ほかにもさリ気なく著名な監督の名前をいただいた入物が出てきます。 この作品の面白さに触れた人なら、あまりにもストレートな『ロボコップ3』は、 ちょっと面食らうかもネ。(Y) |