女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
[シネマジャーナル]
24号 (January 1993)   pp. 2 -- 8
[<ディス・イズ・マイ・ライフ>映評]
■特集女たちのシネマトーク

ディス・イズ・マイライフ

監督  ノーラ・エフロン
製作 リンダ・オブスト
脚本 ノーラ・エフロン
デリア・エフロン
撮影 ポピー・バーン
音楽 力ーリー・サイモン
出演 ドティ・インゲルス……ジュリー・キャブナー
エリカ・インゲルス……サマンサ・マシス
オパーリ・インゲルス…ギャビー・ホフマン
アーノルド・モス………ダン・エイクロイド

とーく参加者(年令順) ★佐藤★出海★宮崎★地畑

今回は、仕事に家事に子育てに頑張る、 お母さんの映画。このお母さんどこかの国の映画のように ウォーターフロントのトレンディなマンションに住むのでもなく スーツをビシッと着こなしたキャリアウーマンでもない。子供とともに人生を、 いや人生などという大げさなものではなく、毎日のこの生活を喜び悲しみ、怒り、楽しむ。 そうですね、私たちと等身大の働く子持ちのお母さん。 明るくさわやかな中に熱い母性愛がにじみ出て、 日頃クールで自立したお母さんをワァーンワン泣かせてしまう、 したたかな映画。そしてやっぱり女性でしか作れなかった映画なのです。 では、トークをどうぞ!

★監督について

出海 

「トークを始めます。十分にテープがございますので何なりと御感想を」

地畑 

「その前に監督の紹介をしますね。 まずノーラ・エフロンはシナリオから出発して」

佐藤 

「いくつくらいの人?」

地畑 

「一九四一年生まれだから」

佐藤 

「私と同じ位なんて言わないでよ、二つ上よ」

出海 

「佐藤さんより二つ上だとはっきり書いておきましょう(笑)」

地畑 

「彼女は『ハートパーン』という本を書いて有名になったのね。 『大統領の陰謀』って、映画あるでしょ。あの時にダスティン・ホフマンが演じていた 記者の力ール・バーンスタインていう人と彼女が結婚していてね、 彼女の妊娠中に彼が浮気をしちゃったワケ。それで離婚。 その時のゴタゴタの話を書いたら売れちゃった。」

出海 

「それが『心みだれて』なのね」

地畑 

「そうよ、彼女が原作とシナリオを書いたの。 その他『シルクウッド』や『恋人たちの予感』。『私のパパはマフィアのドン』 もそうだけど、これ面白い映画よ。監督は女性のスーザン・シーデルマン。 それからハーバート・ロス監督の『マイブルーヘブン』を書いているでしょ」

佐藤 

「じゃ、もう売れっ子ライターね」

地畑 

「そう。しかも共作でなく、ほとんどひとりで書いているのよ」

佐藤 

「でその後、彼女また結婚したの?」

出海 

「身につまされた質問!(笑)」

地畑 

「したわよ」

出海 

「誰としたの(笑)」

地畑 

「知らないわよ(笑)」

佐藤 

「誰としたの、とくやしがると書いて(爆笑)」

出海 

「ね、本当にだれとしたの(笑)」

佐藤 

「ずるいわよ、何人も(笑)」

地畑 

「(真面目に)で、彼女はこの『ディス・イズ・マイ・ライフ』 でシナリオと監督をしまして、さらにプロデューサーも女性ですね」

出海 

「あ、その人ね、東京国際映画祭にいらしてね、舞台挨拶したのね。 黒のパンツスーツでワイルドな感じの美人。 その人の内輪話だとね、偶然だけどスタッフに離婚家庭が多くて、 子役の二人も離婚家庭の子供だったんですって。 監督、プロデューサーを始めスタッフには子持ちで映画の仕事をしている女性が 自然に集まってしまって、その意味では気持ちをひとつにして作品を作っていけたと言っていたわ」

地畑 

「プロデューサーは『フィツシャー・キング』の製作をした人で、 売れてる人よ」

出海 

「で、この映画は女性たちが集まって作ろうとした インディーズ映画だったんですって。お金も集め、スタッフも決めて、 何とか作りたいって、それでいろいろ売り込んだけど反応はいまいちで、 自分たちでやろうとした時、結果的に二十世紀フォックスがのってくれて、その上、 東京でも上映できて、とても嬉しいって言っていたわ」

地畑 

「あっ、資料によると、三番目の夫は作家であるニコラス・ビレッジって 書いてある」

佐藤 

「三回もしてるの!くやしい」

出海 

「一回じゃダメね(笑)」

宮崎 

「興行成績はどうだったのかな、私は平日に行ったけどすいていた」

佐藤 

「私は半分は埋まっていたわ」

出海 

「私は映画祭だったけどオーチャードホールがほぼ一杯」

地畑 

「男の人が行かないからね…」

出海 

「『外科室』を見にきた女性が大挙して行けばいいと思うけど」

佐藤 

「そうよ『インドネシア』なんて行かないでさ」

一同 

「『インドネシア』!!(爆笑)」

出海 

「今の『インドシナ』の誤りでございます」

佐藤 

「そう『インドシナ』の奥様たちはこっちへこい(笑)」

★母親としての自信を与えてくれる映画

地畑 

「これ面白かったけどいわゆる映画好きという人たちは見て満足したかな」

宮崎 

「うん、少しもの足りなかったんじゃない」

佐藤 

「いえ、十分面白かったわ。オバ様たち、及び離婚家庭は全部見るべしと言 いたいな」

出海 

「私も同感。『テルマ&ルィーズ』に次ぐ感動作品よ」

宮崎 

「お二人は十分身につまされたんじゃないですか」

出海 

「そのとおりよ」

佐藤 

「すごいショックよ」

宮崎 

「出海さんはロケで家を空けることもよくあるでしょ。 状況が似ているじゃない」

出海 

「ひとごとじゃないのね。あのお母さんと仕事内容も似ているし、 子供も特に、あの長女がメガネかけて本好きまで、私の長女とそっくり。 それに、ホラ、お父さんのところへ会いに行くでしょ。すごく生々しいじゃない。 私、子供に少しでも働くお母さんの気持ちをわかってもらおうと一緒に見に行きたかったのね、 大学生の息子は別として中学生の長女と小六の次男を最近、 結構映画や音楽会へ連れ歩いているんだけど、これを一緒に見に行く勇気はまだ…」

宮崎 

「これを見て、モロ、出海さんの家庭を頭に描いてしまった」

出海 

「ウン、私、本当に見てよかったと思ったのは、 あのラストの歌がタイトルバックに流れて訳がでるじゃない。 その時〈やっぱり子供が一番、私の一番の宝〉のような歌詞がでたのね。 その時、ククッーと胸が詰まった。ホラ、また例に出して怒られるけど、 東映映画で、子を思う母親の心を美化して押しつけてくるじゃない。 大キライなのね。母親である前に人間であり、女であるんだと反発していたのね。でも、 こんな変なヘソマガリのお母さんでもあの映画見たら、本当にその通りだと共感できたのね。 うれしかったわ。仕事も大事だし、男だっていて欲しい。 人はそれぞれ価値観が違うけど、でも自分にとって生きる上で子供は大切なので… 自分なりの親の在り方に自信を与えてくれた映画です」

佐藤 

「あと、紙を食べる男、あれよかったわ…」

出海 

「よかった、よかった」

地畑 

「スゴイよね。『ブルース・ブラザース』に出てきた彼が、 あんな役をうまくこなしてるなんてキャスティングも感動したわ」

出海 

「で、同じ境遇の先輩、佐藤さんの感想も聞きたいな」

★リアルすぎてドキツとする中身にショック

佐藤 

「そうね、私もすごく共感して感動したんだけど、反面 〈こんなに頑張っていますよ〉という意図が出すぎてしまって、 反発する人たちもいるんじゃないかな」

地畑 

「そこが男性客を遠ざけるかもしれないかな」

出海 

「日本ではここまでというセーブが男のスタッフからかかって、 中途半端なものになるでしょうね」

佐藤 

「本当にリアルでドキッとするところが沢山あったわ。 特に子供たちが父親に会いにいくでしょ。そのお父さんときたら、 ハゲでうらびれているというか新鮮味がなくて男の魅力の皆無の人だったじゃない。 もう驚いたわ。ショックだった。ね、あれ子供たちに見せたくないでしょ」

出海 

「同じよ。あれだけは見せたくない」

佐藤 

「イメージで置いておきたいのに、どうして会いに行くのかなって、 ドキドキするじゃないよ。普通の映画ならそんな時、 ロマンスグレーのいいお父さんが出てくる筈なのに、あれはリアルすぎてすごいショック」

出海 

「あれは女じゃないと描けない」

地畑 

「あのお父さんの後妻さんて、生活の色のない女だったわね」

佐藤 

「ウン、本当にくだらない男といたんだなアと(笑)…もう(絶句)」

宮崎 

「すごい実感こもっていますね(笑)」

出海 

「佐藤さん、ただ今ソファからひっくり返りました(爆笑)」

佐藤 

「(坐り直し)あれはね、今迄に見たことのないショックシーンでしたね・・・」

出海 

「しかもぜんぜん劇的でない」

佐藤 

「子供がね、あんなくだらない男の、お父さんを見て、 目が点になってしまったのよ(爆笑)」

出海 

「インパクトが強い!」

地畑 

「子供が、お父さんからお金を受け取って、カバン下げて 電車に乗るところあったでしょ。カバンを引きづって。 私、あのシーンが忘れられない」

出海 

「子供が〈さよなら〉も〈また、会いたい〉も〈ありがとう〉 も言えない複雑な気持ちで別れるところね」

佐藤 

「〈糖尿病じゃなかった〉とか言って笑ったけど、もの悲しくて…」

出海 

「あのシーンはよかったですね」

★子持ちでない独身女性の反応は?

出海 

「では次に、宮崎さんはどうでした? あ、宮崎さんは長いこと付き合っている彼はいるけど、結婚はしたくないし 子供も欲しいとは思っていないという彼女です」

宮崎 

「面白かったけど、終わり方がちょっとがっかり。もの足りなかった」

出海 

「と、申しますと?」

宮崎 

「せっかく成功したのに、もっと活躍して広げていこうという方向でなく、 縮小する方向で終わったでしょ。その点がもの足りなかった。現実的には、 そういうことが多いわけだから、映画くらいは、もっと夢を見せて欲しかった。 たった五週間、家を空けただけなのに、子供たちの不満がすぐに出てくるなんて設定が ちょっとね。しかも、成功して帰ったのに、子供たちの言葉ですぐ、 泊まり掛けで仕事に行くのはやめるって改めちゃったでしょう。一年とか長い間、 子供たちを放っていたわけでないし、遊び回っていたわけではないでしょ。 成功したばかりじゃない。子供たちをもっと説得して、頑張るって設定でもいいじゃない」

出海 

「でも大人にとって一週間でも、子供にとっては一年なの」

地畑 

「それは、この前出海さんと電話で話したことと重なるけど、 バランスの問題なのね。現実的には彼女にとっては出来ないのね。ああせざるを得ない」

出海 

「仕事も大事だけど、子供も同じくらい大事なワケ」

宮崎 

「だけど、子供たちだってお母さんがコメディアンになることに 反対していたワケじゃないでしょ。応援していたのに。それに最後、 泊まり掛けの仕事をやめて日帰りでできる仕事にするというところで 終わっているのはやっぱり不満」

佐藤 

「それはいけないわね」

宮崎 

「ウウン、それはそれでいいと思うの 〈でもいつか、もっとあなたたちが大きくなったら、もっとバリバリやるわ…〉とか、 そういう終わり方を期待していたのね」

★働く女のバランス感覚

出海 

「私は、ああいう終わり方でいいと思うの。 プロデューサーもおっしゃっていたけど、女性にとってバランスのとり方がとても大事なのね。 女性って、仕事で伸びていく世界と、子供とのプライペートな世界ってあるでしょう。 男の人だったら、子供は女房にまかせて仕事に精を出すのが正しいと考えられてきた。 今もそれが主流。でも女性は違うのね。これは不平等とかめんどうだという問題でなく、 このバランスをうまく取れること、取ろうとすることが人生であり、 女なんだって言っていると思うのよ。いつも、どうしょうどうしょうと考えるじゃない、 どちらかを捨てて、どちらかを選ぼう、その方がいいのか…とか。問題は、 その中でどううまくバランスをとって生きていくかだと思う」

佐藤 

「それは、大変なことよね」

地畑 

「でね、キャリアを伸ばすってよく女性たちはいうけど、 仕事、仕事で一年も二年も家庭より仕事を選んでどうなるかってことね。 このお母さんの場合私は子供がいなかったらあそこまで伸びなかったと思うわ。 はじめ、昼の化粧品の仕事するけど、夜は行かなかったと思う」

佐藤 

「じゃ、子供がいないと女性は伸びないってこと?」

地畑 

「違う、違う、この人の場合は子供がそうだったと言っているの」

出海 

「バランスっていうと子供と仕事となるけど、 たとえば子供がいない人なら夫と仕事、あるいは恋人と仕事、おばあさん、 おじいさんと仕事とか、皆それぞれに揺れるポイントは違ってもあるでしょ」

地畑 

「私なんてモロそう。今、結婚一年目だけど、言えるわね。 うちは全然手の掛からない夫で、それぞれがやりたいようにしてるけど、 でも、いるいないで気をつかうのね。でも夫の前は両親だったし、 一人で生きているわけではないから、やっぱり逃れられないものね」

★働く女性にぜひ見てもらいたい

佐藤 

「私もそういう点では子供にものすごく気を使うわ。 使いすぎてしまうくらい。だから、お金にならないけど家でできる仕事にしよう、 なんて考えてしまったところがある。家でフォローしてくれるパートナーがいない 離婚家庭の女が仕事をもつことは、二重に大変なことなのよね。 父親の役割もはたさなくちゃいけないんだもの。その点この映画では、 多くのユーモラスな友人がベビーシッターで来てくれて本当にうらやましかった。 でも、あなたはパリバリ仕事してるように見えるけど、 やっぱり子供たちに気をつかってるんでしょ」

出海 

「私も使うわ。これから先、どうやって三人の子供を一人で育てていこう… なんて考え始めると不安で不安で…」

佐藤 

「あなたはロケだと、子供だけの時もあるみたいだけど、 考えたら管理職の女性だって同じよね。何日も残業で早く家に帰れなくても 仕事はしなくてはいけないし」 (別に管理職の女性でなくてもそうです。 私の十月の残業時問は四十四時間でした。編集担当)

出海 

「そうね、毎朝決まった時間に家を出て決まった時間に出社する女性たちって、 私からみるとスゴイと思うのね。フリーの私なんて、子供が熱だと 医者へ連れていく時間も割り出せるし、学芸会や運動会もよほどの予定でない限り あけることが出来るもの。だからどんな仕事でも同じなのね」

宮崎 

「『恋人たちの予感』でも絶対結婚しないと言っていたから、 新しい形の男と女の関係でも描かれるかと思っていたのに、最後は結局、 結婚するってことになっちゃって、女の定番的生き方を選ぶっていう結末で、 がっかりしちゃったし、この映画でもせっかく成功したばかりなのに、 これからも伸びて行くという方向でなくて仕事をセーブするという結末でがっかり。 女が仕事を続けていく現実はきびしいのは、わかりきっているわけだから、せめて、 私は女性監督の映画に期待したかったんだけどね」

出海 

「彼女はいいんじゃない。今は子供と子供が成長したら仕事にって、 その時その時で、仕事の仕方を変えていく」

佐藤 

「でも何年かして、では仕事をと思った時に人気が落ちてたりしてたら」

出海 

「そしたら、また化粧品セールスよ。 それでもいいじゃない。男だったらそれは失敗と取るけど、私も似たところがあって、 今の仕事がダメになったらまた考えるってところがある。 何をしても食べていくぞって気持ちがあるのね」

地畑 

「そこが男の仕事感と違うところね」

佐藤 

「男の上昇志向とは違うところね」

宮崎 

「いろいろな形があっていいと思うけどね」

地畑 

「ま、私のような若輩者にはこれからの人生に起こる様々なことを 教えていただいた映画でした」

佐藤 

「ただ私たちってテーマや描かれた人生で話が盛り上がったけど、 映画としてどうなのか…は、わからない」

出海 

「感動した映画が私にとって映画としてもいい映画よ」

宮崎 

「それは、そうだと思うよ」

地畑 

「ペニー・マーシャルの『プリティ・リーグ』に比べると盛り上がりや、 楽しさ、役者の使い方とかの魅力に少し欠けるけど、比べられないしね」

佐藤 

「とにかく全国のお母さん、見て下さい」

出海 

「細かいエピソードの中で、大いに笑い、 共感し励まされる部分がありますよ。どうも皆さんありがとうございました」

(まとめ出海)


ディス・イズ・マイ・ライフ

S. 飯島

好きな映画です。

デパートの化粧品コーナーで、コメディアンヌを夢見る女性、ドティと二人の娘が主人公。 彼女の成功物語と、二人の娘との母子関係が、テンポよく進んでいく。

何が好きかというと、
まずドティのキャラクター。天真欄漫で、常に前向き。落ち着きがないのだが、 人を魅きつける大らかさ。演じるジュリー・キャブナー、大柄で、 大きな瞳がまた魅力的なんだけれど。何より健康的なのがいい。

アメリカってそういうところがあるけれど、二人の娘との姉妹のような関係もいい。 ずばっずばってものを言い、対等に彼女達と接する。 二人の娘がすごくいい子達なんだけれど、そんな二人がこの母親の子であることを、 すごく納得させてくれる。

テレビの中で、二人の娘の名を言って、娘達が喜ぶシーンなんて茶目っ気たっぷりでいいではないですか。

二人の娘が心の葛藤をしてるというのに、何だか全然気付かなくて、 家出されてしまって、ふらふらになってしまうあたり人間的で、この人物好きです。 脇役が多かったジュリー・キャブナー、これから頑張って欲しい。

そして、二人の娘がいい。
可愛いくて、お茶目で、何より笑顔がいい。
長女のサマンサ・マシスは、決して表情は大きくない人だけれど、 あの眼鏡の奥の大きな瞳が、姉として妹を見守り、母に甘えたり、 恋をして焦点が合わなかったり。母を理解できず、不安でいっぱいの目になったり。 初体験の時の、なんだかよくわからないといった表情なんかすごくリアルでしたね。

妹のギャビー・ホフマンは、とにかく可愛い、可愛い。この娘は表情豊かで、 彼女の存在感はこの映画をよりホットにしている。

3人を取り囲む人物たちもGOOD。キャリー・フィッシャーはすごく年を取ったような気がしたけど、 よく立場をわきまえていて要所要所にエッセンスを加えた。 ダン・エイクロイドはちょつと弱かったかな。 やっぱりこの人は「ブルース・プラザース」が一番なんだけど、 「あっダン・エイクロイドが出てる!」というだけで、新鮮でした。

夢見る女性、女の子向きの映画ですね。



ディス・イズ・マイ・ライフ

M. 黒木

夫と離婚して二人の子どもを育てながら、ショービジネスの世界で成功したいと奮闘する母親。 そんな母親に、夢をはたしてほしいと願いつつも、いつもそばにいて 見守って欲しいと思う娘たち。特に一六歳の娘は、ラスベガスで成功し、 テレビで放映される母親を見てわがことのように大喜びする一方、 初めて自分に恋人ができたとき、仕事のために家庭を留守にしている母親に対して 寂しさをつのらせる。こんな時にこそ、そばにいてくれるのが母観の役割だ、 と彼女は信じている。このあたりは、母親に対する子どもの思いがリアリティをもって描かれている。

彼女は、離婚したあと居所のわからない父親を捜しあてて窮地を訴える。 だが夢に描いていた父親とは違い、父親はつれない。そこで初めて、 両親の離婚を客観的にみることができるようになり、母親を理解する。

アメリカでも日本でも、いずこも働く母親は大変だなあというのが一番の感想。 この映画を、娘、息子、夫、私と家族四人で揃っても見たのだが、映画の中の離婚家庭と、 母親の帰りが遅い我が家の共働き状況があまりにもよく似ていて身につまされた。 むろんコメディだから笑える部分も多いのだが、映画が終わっても いつものように感想をペチャクチャというわけにはいかず、家族四人押し黙ったまま。 十一の娘が主人公の女の子に自分をオーバーラップさせたようで、 「見ていたらお母さん(私のこと)を思い出した」とポツリと一言。 我が家の子どもたちも、私に対してきっとあんな思いを抱いているのだろう。 働く母親を支えるのはつくづく家族だなあと実感。

藍督、製作など主要スタッフを女性が占めているというだけあって、 自己実現のために奮闘している母親と、その子どもたちに対する、 愛のこもった力強い応援のメッセージを感じた。



監督・脚本 ノーラ・エフロン

反核をテーマにしたマイク・ニコルズ監督の「シルクウッド」(85)と、 ロブ・ライナー監督のヒット作「恋人たちの予感」(89)の脚本を アリス・アーレンと共同で書き2度アカデミー脚本賞にノミネートされ、 いまアメリカ映画界で最も注目されている女流ライターのエフロンが、 始めて監督に進出し、その力量が高く評価されている。

31年生まれで、両親のヘンリーとフィービー・エフロン夫妻も 名コンビのシナリオ・ライターとして知られる。 73年"Crazy Salad"というエッセイで現代女性についてユーモラスな論評を加えて人気作家になる。

ウォーターゲート事件のスクープで、一躍スター記者となったカール・バーンスタイン (「大統領の陰謀」でダスティン・ホフマンが扮した)とノーラは結婚していたが、 彼女が妊娠中にカールの浮気が発覚。二人は離婚しマスコミでも話題になった。

ノーラは、この体験をもとに『ハートバーン』という小説を書き大ベストセラーになった。 これは彼女の脚色、メリル・ストリープ主演、マイク・ニコルズ監督で映画化され 「心みだれて」の邦題で公開された。

シナリオ・ライターとしては「私のパパはマフィアの首領(ドン)」 「マイ・ブルー・ヘブン」があり、今回は姉妹のデリア・エフロンと共同で、 メグ・ウォリッツァーの小説を脚色している。

ベストセラーになった短編小説集には"Scribble, Scribble"もある。 シナリオ「恋人たちの予感」も一冊の本になって出版されており、 彼女は製作うらばなしを書いている。

現在はニューヨーク市に、ジャーナリストの夫ニコラス・ピレッギと二人の子供と一緒に住んでいる。

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