女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
[シネマジャーナル]
19号 (1991.06--08)  p. 16
試写室

『お家に帰りたい』


製作●マリン・カルミッツ
監督●アラン・レネ
脚本●ジュールス・ファイファー
キャスト●
アドルフ・グリーン
ジェラール・ド・パルデュー
リンダ・ラヴァン
配給●シネマドゥシネマ


●フランスかぷれのヤンキー娘、エルシー(ローラ・ベンソン)が留学中のパリに、彼女の父親でアメリカンコミックス作家のジョーイ・ウェルマン(アドルフ・グリーン)がやってきた。
アメリカ人であることを忘れたくて、「ラシーヌ、モリエール・・」とうわ言のように咳くエルシー、よくも悪くもチャキチャキのアメリカ人ジョーイ、彼に同行する長年の“良い仲”のリーナ。それに加えて、アメリカのサブカルチャーにぞっこんの軽薄タレント教授、クリスチャン・ゴーティエ(ジェラール・ドパルデュー)。彼らはひょんなことから、郊外のゴーティエ宅の仮装パーティに集う。一癖ふた癖ありそうな老若男女たちが、アパンチュールに嫉妬にけんかに、どんちゃん騒ぎを引き起こす。
かくしてまっとうな(?)アメリカン、ジョーイ・ウェルマンは「お家にかえりたーい!」と爆発してしまう。…

●屋敷を飛ぴ出したジョーイが村人と操り広げる、カルチャーギャップ・ギャグは抱腹ぜっとう。
いろいろあったけれど、雨ふって地かたまる、ジョーイとエルシー親子は和解して、ラストには素敵なフランス流ロマンスまであったりして…。
とまあ『お家に帰りたい』は『夜と霧』あるいは『去年マリエンバードで』などなどヨーロッパの知と美を代表する映画をつくってきた人、アラン・レネによるロマンチック・コメディなのである。
そういうギャップをうんぬんして、話や台詞の裏のうらを読み取るのもいいかもしれない。でもそんなことおいて、突然画面に登場するマンガのキャラクター、ヘップキャットやシャルル・ドゴール空港をチャールズ・ドゴール空港などと英語読みしてしまうジョーイの徹底したアメリカ人ぷりなど登場人物たちの繰り広げる“異文化”がもたらす、笑いの数々を時に自分や身の回りにあてはめて楽しんでみては。
最後に付け加えたいのは、70才になろうかというミシュリーヌ・プレールの艶やかさ、美しさ。幾つになっても女は恋を忘れてはいけません(もちろん男の人もヨ)。


●1989年度ベニス映画祭最優秀脚本賞などを受賞
●七月二〇日より俳優座シネマテンにてロードショー公開

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