女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
[シネマジャーナル]
19号 (1991.06--08)  pp. 20 -- 21

横浜女性フォーラムを訪ねる



JR戸塚駅西口のこちゃこちゃとした商店街をぬけ柏尾川をわたる頃になると、煉瓦色の横浜女性フォーラムの建物が見える。渋谷から東横線で横浜へさらにJR東海道線にのりかえてと、ちょっとした小旅行気分で駅を降りたのだったが、都内のこせこせとした町並みを見慣れた目にはたっぷりと空間をとったその建物はかなり贅沢に映った。

「女性の地位向上と女性同題の解決をすすめるための市民の活動と交流の拠点となる」ことを目的としてたてられた、横浜女性フォーラムを訪ねたのは5月のある日。小雨混じりの曇り空の中に、館内の明るく広々としたさまが見て取れる。同行の編集部Eもわたしも言葉にこそださないが、「家の側にあったらなあ」という思いを抱かずにはいられない。


この訪問のきっかけというのは、ビデオ製作を生業としている本誌編集スタッフEと女性のためのビデオソフト開発のため女性のビデオ製作者をリサーチしていた女性フォーラムとがまあ当然のごとく結びついたため、といっておこう。

どうせ行くならシネマジャーナルの取材もかねて、というのも送られてきたパンフレットにある、講演会・映画会等のためのホールの「親子席」というものに大いに興味をそそられたからだった。

というわけで3階建ての上から下までを見学。3階にはフィットネスルーム、健康サロン、会議室などが、2階には映像工房と生活工房というのがある。映像工房はビデオの編集ができるスタジオで、徐々に女性たちのビデオ製作自主グループが育ってきているそうだ。生活工房は広々としたオープンスペースで工作でも料理でもできるようになっている。


そして1階の三九〇席のホール。このホールを利用して「フォーラムフォーラム」と題する様々なイベントが催されている(もちろん映画の上映会も)。

さて、問題の親子席なのだが・・・、一般席の出入り扉の横に別の扉があって少し階段を上るとたたみ2畳~3畳の個室になっている。床は絨毯になっていて靴を脱いであがる。ステージを望む大きな窓は硝子張り、壁は防音。これなら小さな子どもが泣いても騒いでも、周りを気にすることなく映画でも音楽でも講演でも楽しめるという寸法だ。

子ども映画の上映館ではない映画館に、小さな子どもを連れてきて泣かせる親ほど腹のたつものはないのだが、小さな子どもがいても映画館で映画が見たいという人もいて当然。とはいえ映画を見に行くためにいちいちベビーシッターを頼むなどそう易いことではない。

本当に映画が見たい人はがまんしているのでは、と日ごろ思っているので、実際にそうしている人にはつい首をかしげてしまう。こういうホールがないのが、不思議なくらいなのだが、子どもがいる人にとってもいない人にとってもどんどん出現してほしいものだ。

1階には他に相談室、子どもの部屋(一時託児所)、情報ライブラリーなどがある。


このライブラリーにフォーラムが制作した“自己開発プログラムメニュー”というビデオソフトが並んでいる。「じりつ」編の“もしも離婚を考えたら”“女性の海外留学”“男性が単身赴任で困らないために”とか「くらし」編の“共同購入実践法”あるいは「しごと」編では女性の活躍する様々な仕事を紹介するといった、女性にとって興味深いテーマを10分前後で掘り下げている。これを材料にして自己学習やグループ学習できるようになっている。


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横浜女性フォーラムが先程のホールで上映してきた映画は

●89年
痴呆性老人の世界/アキコ・カンダの世界/モモ/カラーパープル/X指定/戦場の女たち/東京裁判/ワールドアパート
●90年
カッコーの巣の上で/ジャクスタ~2つの文化のはざまで~/八重桜物語/竹の子の歌/雨の指もじ(識字フォーラム)/主婦マリーがしたこと
●91年
安心して老いるために

そして今年の八月にはフォーラム「地球人へのパスポート」と題してアジア映画祭を行う。・・・

*八月二三日
「カタストロフ」監督:ジャーヌ・バルア/インド/87年
「水の季節」監督:ホン・セン/ベトナム/86年
「山の民」監督:ウィチット・クナーウット/タイ/79年
*八月二四日
「サラワクの息子」監督:ラヒム・ラサリ/マレーシア/88年
「バー21の天使」監督:ユッタナー・ムウダーサニット/タイ/76年
「父」監督:アグス・エリアス/インドネシア/88年
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