女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
[シネマジャーナル]
14号 (1990.04)  p.68

□映画評

  チョウ・ユンファ
  アレックス・マン
  イップ・トン
         素敵な笑顔、ありがとう  


『等待黎明』—風の輝く朝に—を観て

R. 佐藤

風邪気味の重い頭で入ったユーロスペース。 だけど出るときは、風邪なんてとんでしまったかのような軽やかな足どり。 ニコニコ、にこにこ。映画って本当に不思議です。 生きててよかったと思えるような、心にしみる素敵な笑顔がスクリーンにある。 そんな時って本当に嬉しい。

『誰かがあなたを愛してる』でこれが香港映画?って驚いてチョウ・ユンファの巧みな演技に ほれぼれした私だったけど、『風の…』のチョウ・ユンファは『誰か…』よりもっといい。 親友を大切に大切にする男の優しさが画面いっぱいに満ち満ちている。 『あ・うん』の変な男たちの笑顔と比べてみてよ!! 比べものにならない位、こっちの方がいい男。 チョウ・ユンファは只の二枚目ではない。 あの目(口元は美男子すぎだけど)がいい。 アレックス・マンの直情的な若さとその笑顔も素晴らしい。 そしてふたりの男に愛される少年のような(女女してない)イップ・トンの演技もいい。 映画の中での彼女の自然な生き様が気にいった。 嬉しさを表現するのに、海に飛び込むシーンもすごーく印象的。

カンフー的なアクションがいっぱいあったり、侵略者である日本軍の描き方が、 日本人から観るとリアリティに欠けているなどと、 素人の私が観ても映画自体は技術的に完成度が低いのではということも感じられるけど、 それを補ってあまりあるくらい、主人公の三人は題名の如く"輝いて"いる。 キャスティングの勝利と断言したいほどだ。

日本は、彼等に対してかくも残忍だったということ(私はもっとひどかったと思う)、 若い人に知ってもらいたい。 日本以外のアジアの国で作られる映画にでてくる人々の顔は、 日本の『キューポラ…』や『純愛物語』の時代の若者に似ている。 ギラギラと自分の夢に向かって歩いていく若者の姿が、懐かしい。 物質的に満ち足りてしまった若者たちには、夢を追いもとめて、切なく生きる"青春"は、 もはやスクリーンのうえで、疑似体験するしかないのだろうか。 そんな彼等(私の息子や娘)にこの三人の笑顔を贈りたい。

ラブシーンもおしゃれで洗練されてて、ヨカッタ。

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