女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
[シネマジャーナル]
10号 (1989.04)  p. 45

最近思うこと

地畑寧子

『レインマン』確かにいい作品でしたが、(ダスティン・ホフマンはとにかくいいけれど…) 宣伝派手すぎませんでしたか? 異様な混み方でびっくりしました。そのホフマン、 主演男優賞にノミネートされていますが、私は個人的にはジーン・ハックマンにと思っています。 今回書きたかったのですが、『ミシシッピーバーニング』。 あの『フレンチコネクション』の素晴らしいハックマンが帰ってきています。 私が個人的に興味がある題材だったうえにアラン・パーカーというこの好みの監督で 『ミッドナイト・エクスプレス』(これを見たときの感動は忘れません) に近い作品のように思えたので見にいったわけですが、少々大味だったけれども ひたすらハックマンの演技に支えられ良い作品になっています。 公民権運動員の殺人事件にはじまり、 南部の人種差別という除き難いしこりを告発した衝撃の大きい作品ですが、 ラスト近く自分は善良な市民でありながらKKKの存在を見て見ぬふりをしてきた町長が 自殺するシーンがあります。『告発の行方』といい、 人間の良心という点に注目されはじめていることも感じられます。 最後に『死にゆく者への祈り』。割と簡単に終わってしまったようですが、 著者ジャック・ヒギンスが一番好きな作品といっているだけに重厚。『鷲は舞い降りた』 では原作では重厚な女テロリストの存在を映画では稀薄にしてしまい残念でしたが、 この『死にゆく…』では原作にほとんど近く、登場人物も少ない分、落ち着いた作品になっています。 俳優ミッキー・ロークの実力が十分発揮されて、一種のダンディズムを感じさせます。 名優ボブ・ホスキンスと対等にわたりあい、アラン・ベイツの怪演もあり、 アイルランドの悲劇を背景に漂わせながら、現実を生きる者と神との対話にまで高めている点は 見ごたえ充分です。ローク、ホスキンス、ベイツが演じる三様の男性の人生を じっくり感じるのもいいでしょう。ジャック・ヒギンスが描き続けるIRAの悲劇を感じるのもいい。 ピルコンティの素晴らしい曲に聞き入るのもいい。もう一度見たい作品です。

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